SNSによる風評被害に遭った場合に企業が行うべき対応とは
風評被害は、どの企業にも起こり得る問題で、それがいつ起こるかもわかりません。昨今は誰もがSNSを使っており、一個人の発信する情報が世界中に広まる可能性も秘めています。事実の評判であればまだしも、事実無根の情報を拡散されてしまい、企業が大損害を被ることもあります。
そこで当記事では、「SNSによる風評被害に遭った場合、企業がどのように対応すべきか」について解説します。
SNSによる風評被害とは
風評被害とは、誤った情報が広まることにより生じる経済的な被害を意味します。例えば、「非常に執拗な営業をかけてくる企業だ」「あの企業の代表者は暴力団と繋がりがある」などと虚偽の情報をSNSに投稿されることで風評被害に遭うことがあります。
個人の受ける被害として、最近「誹謗中傷」が注目を集めていますが、風評被害とは異なります。誹謗中傷は悪口を言いふらすことなどを意味し、悪態をつくようなニュアンスを持ちます。一方の風評被害は感情的なものではなく経済的効果として被害が生じます。そして流れる情報が事実か・事実でないかが特に重視されます。
風評被害は昔から存在するものですが、SNSの登場によりさらに身近になりました。SNSを使えば誰でも気軽に情報を発信することができますし、システム上、拡散能力が非常に高いという性質を持ちます。そのため大企業がターゲットになり得ることはもちろん、ローカルで活動する中小企業であってもある日突然“炎上”し、風評被害に遭うことは起こり得るのです。
風評被害による企業への悪影響
風評被害に遭うと、さまざまな悪影響が企業に及びます。
一つは「顧客離れ」です。既存の顧客が風評を真に受けてしまうと、信用を失ってしまい、取引数が減ってしまいます。当然、新規顧客の獲得も難しくなってしまいます。
また、顧客が寄り付かなくなることで「売上の減少」にも繋がります。一般消費者との契約、取引先企業との契約のいずれに対しても悪影響が及び、取引の数が減ってしまうことが売上減少に直結します。
風評被害に遭う前の知名度・ブランド力が高いほど、「ブランドイメージの低下」の影響も受けます。そうしたイメージの悪化は、株価の下落にも繋がります。さらには、顧客のみならず新たな人材の獲得も難しくなってしまうでしょう。
SNSによる風評被害への対応
SNSによる風評被害は企業に甚大な損害を与え、場合によってはその後事業が継続できなくなるおそれもあります。取り返しのつかない事態に陥る前に、以下の対応を取るようにしましょう。
投稿内容の調査
まずは事実確認を行いましょう。「どうやら自社に関する情報が拡散されているらしい」といった噂を聞いたときは、すぐにその投稿内容をチェックします。そしてその投稿内容が事実かどうか、風評被害に繋がるリスクを秘めているのかどうか、などリスクアセスメントを実行すべきです。
誰が見ても明らかにウソであると見抜けるような投稿にまで逐一対応はしていられませんので、その投稿に対する他のユーザーの反応や、事業に与える影響などを総合的に判断しないといけません。
その調査と判断を迅速に行うこともとても大切です。
SNSを使えば、たった一日で容易に日本中に情報を拡散することができます。できるだけ早めの対応を心がけましょう。
投稿の削除請求
調査の結果、投稿された情報が虚偽であることがわかったときは、その投稿内容の削除依頼を検討します。
削除依頼を出す方法はいくつかあります。
- 投稿者本人に対して削除を求める
- SNSの運営会社に対して削除請求を行う
- 弁護士に削除請求の対応を依頼する
投稿者本人に対して削除を求めるときは細心の注意を払う必要があります。そのやり取り自体をさらされることも念頭に、丁寧な対応をすべきです。その後投稿内容が虚偽であることが示せたとしても、削除請求にあたり高圧的な態度を取ったり暴言を吐いたりしていることが広められると、結局自社には悪影響が及びます。
そもそも投稿内容を削除すべきかどうかもよく考える必要があります。事実無根の情報がリアルタイムで増えているような場合には削除請求が一定効果を発揮するかもしれませんが、一つの投稿が原因で“炎上”しているときは大元の投稿を削除してもスクリーンショットなどの画像データとして情報は残り続けます。
削除要請に躍起になると余計な被害を広げるリスクがあることも認識しておきましょう。
弁護士への相談
突然起こった風評被害にパニックになるかもしれません。対応に困ったとき、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
後々損害賠償請求などを行う可能性もあるため、証拠を残しておくなど、自社を有利にするための措置を取るべきです。法定な観点から、具体的にどのようなアクションを起こすべきか、これについては弁護士からアドバイスを受けると良いでしょう。
法的手段と訴訟
個人的に行う投稿内容の削除請求には強制力がありませんので、結局は投稿者本人や運営会社の判断に任せることになります。そこで特に削除の必要性が高い場合は、裁判所を利用しましょう。削除を求める仮処分の申立が手段の一つです。
また、将来的に損害賠償請求を行うのであれば、投稿した人物を特定しないといけません。そこで運営会社に対して発信者情報の開示を求め、仮処分の申立、あるいは民事訴訟の提起も検討します。
時間やコストもかかりますし、できるだけ自社の損害を回復するためには、企業法務およびSNSやインターネット上で起こるトラブルへの対応に強い弁護士を探しましょう。
正しい情報の発信
「間違った情報を発信してしまいました」と投稿者本人が認めても、拡散された情報に触れた他のユーザーには風評が流れっぱなしになっています。そこで、正しい情報も発信、拡散する必要があります。
SNSの公式アカウントを使った周知徹底。プレスリリースやその他の手段も使って、できる限り誤った情報を上塗りしていきます。
ステークホルダーとの関係の再構築
離れてしまった顧客、取引先との関係を修復しないといけません。正しい情報の拡散もその一手段ではありますが、顧客エンゲージメントを強化するなど、それまで以上にさらに質を上げて再構築することが大事です。
SNSや自社ブログを使った顧客とのコミュニケーション。SNSを使ったキャンペーンの実施など、SNS上での顧客との接点を多く持つことも大切です。普段からSNSで密接なコミュニケーションが取れていれば、風評被害も抑えやすくなります。ユーザーが情報をうのみにしにくくなりますし、自社の発信力が強ければすぐに情報を修正することができます。
風評被害を抑えるには予防策が大事
風評被害を完全になくすことは困難ですが、損害をできるだけ小さく抑えるには、予防策を打っておくこともとても大事です。
予防策の一つは、従業員等への「ソーシャルメディアポリシーの周知」です。従業員やステークホルダーに対してSNS上での投稿についてのルールを定め、注意点や責任問題などを理解してもらいます。
もう一つは、「自社情報の監視」です。定期的にSNSもチェックしておけば、悪評を一早く発見することができ、事後対応にも迅速に取り掛かることができます。普段からSNSに慣れておくことも、適切な対応を判断する上で重要といえます。
SNSでの風評被害については当事務所にご相談ください
「SNSで風評被害に遭ってしまった。何から手を付ければいいのかわからない。」とお困りの方は、当事務所にご相談ください。実績豊富な弁護士が対応し、被害を最小限に抑えるよう努めます。