消費者からカスタマーハラスメントを受けたときに弁護士へ相談するメリット
消費者とのコミュニケーションが生まれる職場では、クレームが発生する可能性もあります。自社に原因のあるクレームもあれば、嫌がらせに近い悪質なクレームを受けることもあるでしょう。後者は「カスタマーハラスメント」とも呼ばれ、従業員の負担になるとともに業務に支障をきたすおそれもあり、適切な対処が企業には必要です。
そんなときは弁護士に相談するという手段もあります。弁護士が味方につくことで解決できる問題もあり、数々のメリットが得られます。
カスタマーハラスメントとは
カスタマーハラスメントを簡単に説明すると、「客から従業員に対する嫌がらせ」「客からの、理不尽で自己中心的な要求によるハラスメント」「消費者による著しい迷惑行為」ということができます。
日本では顧客を大事にする傾向が強く、その立場を利用して悪質なクレームをつける事案も多く発生しています。特にここ十数年でカスタマーハラスメントは社会問題化しています。2010年代には悪質クレームをきっかけに刑事事件に発展する例が増え、そのころから「カスタマーハラスメント」「カスハラ」という言葉がよく使われるようになり、社会全体にも浸透しています。
実際、厚生労働省による調査(職場のハラスメントに関する実態調査:令和2年10月実施)によれば、パワハラとセクハラに次いでカスタマーハラスメントの発生率が高いことが分かっています。さらに、他のハラスメントに比べて過去3年間の相談件数の推移について、「件数が増加している」と回答した割合が高かったことも明らかになっています。
カスタマーハラスメントの具体例
実際にあったカスタマーハラスメントを例に取り上げてみます。
- 例1)2013年、衣料品チェーン店で土下座を強要した事件
買物客が商品の不良を訴えて従業員に土下座を強要した。そしてその様子をカメラで撮影し、投稿サイトにアップロードした。インターネット上でその動画が広まり、各メディアでも取り上げられて世間の注目を集める事件に発展した。
- 例2)2014年、コンビニで土下座の強要および恐喝が行われた事件
買物客が店員の態度に文句をつけて土下座をさせた上、お詫びとして商品を脅し取った。買物客の仲間がその様子を撮影して動画サイトに投稿したことがきっかけで情報が拡散。ニュースでも取り上げられて世間の注目を集める事件に発展した。
カスタマーハラスメントと聞くと「迷惑行為」をイメージされることもあるかもしれませんが、少なくとも上に挙げた事例は違法行為です。強要罪や恐喝罪に該当しており、これら犯罪行為とカスタマーハラスメントは明確に線引きができるものではありません。
同じカスタマーハラスメントという枠に入る行為でも、「違法行為」となるケースや「違法ではないものの不当な行為」となるケースもあります。明らかな違法行為ばかりではない点が、対応現場を困らせる要因の1つともいえるでしょう。
カスタマーハラスメントへの対処と課題
自社に対するカスタマーハラスメントはいつ発生するのかが予測できません。ただし、事前の対策により頻度や発生可能性を下げることは可能です。また、事後対応についても考えておくことで被害を最小限にとどめることもできます。
具体的には、まず組織トップによる基本方針を策定すること。そして従業員のための相談窓口の整備。カスタマーハラスメントに遭ったときの対応マニュアル策定。従業員に対する研修の実施など、できること・しておきたいことはたくさんあります。
ただ、自社だけでこれらの対策すべてを対応するのは簡単なことではありません。まずはカスタマーハラスメントに該当するのは具体的にどのような行為なのかを知る必要がありますし、違法性の判断をするための法的知識も必要です。
自社が誤った対応をしてしまわないこと、自社の従業員を守ること、事業の妨げにならないことなどを目指すには、対処法について一緒に検討してくれるプロの存在も大切です。
弁護士に相談することのメリット
弁護士は法律のプロであり、法的な紛争において広範にサポートをしてくれる存在です。すべての弁護士が企業法務に強いわけではありませんが、カスタマーハラスメントのような消費者問題を特に取り扱っている弁護士に相談することで、次のようなメリットが得られます。
- クレーム対応の時間を削減できる
- 従業員が安心して対応できる
- 消費者側の違法性が判断できる
- 紛争解決のサポートをしてもらえる
各メリットの詳細を説明していきます。
クレーム対応の時間を削減できる
消費者と直接コミュニケーションを取ることが必要なビジネスであれば、多少のクレーム対応が発生することも想定されているかと思われます。しかしながら、カスタマーハラスメントに該当するような悪質クレームの場合は、業務に支障をきたすレベルで時間を取られる可能性もあります。
きちんと説明をしても聞き入れてくれず、ひたすらに悪態をついてくる消費者もいます。とにかく謝罪を求めるなど自己の要求に応じるまでクレームを続けられると、その対応に多くの時間を割くことになってしまいます。
ここで弁護士が間に立って対応する、あるいは弁護士に適切な対応方法を指南してもらうことで、余計な時間を短く抑えやすくなります。
また予防として弁護士を付ければハラスメント対策にも効率的に取り組むことができ、カスタマーハラスメントが発生する前段階の時間も削減することが期待できます。
従業員が安心して対応できる
カスタマーハラスメントの大きな問題点の1つに「従業員の働くモチベーションを大きく下げてしまう」ということが挙げられます。
消費者から言いがかりをつけられる現場で働いていると精神的に疲弊してしまい、問題を放置していると体調不良や業務パフォーマンスの低下を招きます。
しかし「弁護士に頼ることができる」「弁護士から適切な対処法を教えてもらった」「自社にはカスタマーハラスメントに対応してくれる弁護士がいる」といった心理状態で臨めば従業員の負担も少しは軽減されます。
ただマニュアルを作るだけだと従業員も安心はできません。弁護士というプロの後ろ盾が安心材料となるのです。
消費者側の違法性が判断できる
カスタマーハラスメントと一括りにするのではなく、違法な行為、犯罪行為などに対してはそれ相応の対応が必要となります。しかし違法性判断に関しては法的な知識が欠かせず、この点、弁護士の助言が役に立ちます。
紛争解決のサポートをしてもらえる
カスタマーハラスメントにより実害が生じた場合、加害者である消費者に対して損害賠償請求を行うこともあります。このような紛争に際して、加害者と交渉を行ったり訴訟を提起したりすることになるかもしれません。
弁護士は紛争対応のプロでもありますので、手続のことを教えてくれたり自社にとって有利な結果となるための方法を助言してくれたり、紛争解決に向けたサポートをしてくれます。
特に訴訟を提起するときは弁護士が非常に重要な役割を担い、準備行為、証拠収集などを進めるにしても弁護士の知見と経験が役立つでしょう。
カスタマーハラスメントへの不安があるなら当事務所にご相談ください
昨今の企業にとって、カスタマーハラスメント対策はますます重要なものとなっています。
悪質クレームをつけられて困っているときは早急の対応が必要ですし、カスタマーハラスメントに困っている現状がなくても予防策を打つことは大切です。
もし、「カスタマーハラスメントに悩んでいる」「カスタマーハラスメントに対する不安がある」という状況なら、当事務所にご相談いただければと思います。