定型約款とは?事業者が作成・運用するときの注意点を解説
不特定多数の消費者と取引を行う場合、一人ひとりと契約書を交わしていたのでは手間がかかりすぎてしまいます。
そこで契約業務を効率化するため「定型約款」を活用するのが一般的ですが、定型約款については民法や消費者契約法のルールが適用されることに十分注意しなければなりません。
約款(やっかん)とは
「約款」とは、対多数の者との同種取引を想定した、定型的内容の取引条項全般を指す言葉です。あるサービスを利用するときの会員規約、利用規約などをイメージすると良いでしょう。
大衆向けのサービスだと契約相手が数百人以上、数千人以上にのぼることも珍しくありません。そのような事業を展開していく中で、一人ずつと契約書を交わしていたのでは時間がかかり過ぎてしまいます。
個々にルールを定める必要があるのなら個別に書面を用意する必要性もありますが、同じサービスを提供するのなら別々の規約を用意する必要はないでしょう。約款を用意しておいた方が効率的なうえ、管理もしやすくなります。
定型約款とは
約款のうち、その記載内容が定型取引の契約内容となるときの約款を、「定型約款」と呼びます。
定型約款については民法で定義されており、2020年の法改正の影響を受けていますので、契約としての有効性については留意しなくてはなりません。約款として作成したものが常に定型約款となり、消費者との契約内容として有効になるとは限らないのです。
定型取引における契約内容をまとめた約款のこと
「定型取引の契約内容となる条項の総体」が定型約款です。
そしてこの定型取引とは、「不特定多数を相手に行う取引※1で、かつ、その記載内容が画一的であることが双方にとって合理的※2な取引」を指します。
※1 取引相手の個性に着目する必要があるかどうかで判断する。
※2 同じ契約内容とするのが通常であること、同一内容のルールを相手方もそのまま受け入れるのが一般的といえるかどうかで判断する。
ただし、定型約款も事業者が勝手に作成しただけで全消費者に適用できるものではありません。契約内容として有効に機能するためには、「この定型約款を契約内容とします」といった旨の表示が欠かせません。
たとえば契約の最終的な申し込み段階一歩手前で定型約款を示す、などの対応が求められます。オンライン上のサービスであれば、契約が成立する前に定型約款の内容あるいはリンクを表示させ、これを認識できる状態にしたあとで最終的な決定ボタンを表示させるといった措置が考えられます。
なお、形式的な要件を満たしたとしてもその内容が不当なもの(一方的に権利を制限する、義務を課す、といった条項)であり、信義誠実の原則に反するときは、当該条項は無効となってしまいます。
一定の場合には相手方の同意なく内容を変更できる
定型約款が契約内容として成立したあとで、その内容を変更することも可能です。
個別に契約書を交わしたとしても相手方との合意があれば変更はできますので、定型約款を使ったときも合意があれば当然変更可能です。ポイントは、相手方による個別の同意なく変更できるケースがあるということです。
その変更が消費者の利益になる、あるいは契約の目的に反しておらずその内容も合理的である、と認められるのなら事業者による一方的な変更も有効です。
反対にこれらの要件を満たさないのなら、定型約款に「将来的な規約内容の変更を受け入れる。」などの条項を設けていてもそれだけで有効になるわけではありません。
定型約款の作成について
定型約款の具体的内容は、提供するサービスによっても異なりますが、一般的な構成としては次のように説明することができます。
1. 総則・適用範囲 | 約款の目的、適用範囲や定義など。 |
|---|---|
2. 契約の成立 | 契約の申込みや承諾、契約成立の時期について。 |
3. サービス内容・提供条件 | 提供する商品・サービスの内容、利用条件の詳細。 |
4. 料金・支払方法 | 料金体系、費用等の支払時期、方法、支払いが遅延するときの対応について。 |
5. 契約期間・解約 | 契約の有効期間、更新の有無や方法、解約・解除をするための条件や手続きについて。 |
6. 変更・中断・終了 | サービス内容や約款の変更手続き、サービスの中断・終了条件について。 |
7. 個人情報の取扱い | 個人情報の利用目的、管理方法、禁止事項など。 |
8. 禁止事項 | 利用者の禁止行為、サービス利用上の注意点の詳細。 |
9. 免責事項・損害賠償 | 事業者側の責任範囲、事業者の責任が免除される事由、損害賠償の範囲について。 |
10. 紛争解決・準拠法 | 管轄裁判所や準拠法など。 |
定型約款を作成するときは、以下の点に注意しましょう。
- 消費者側に不当な制限をかけてはいけない
- 相手方の権利を不当に制限する条項は無効になる
- 消費者とのトラブルのリスクが上がるため消費者保護法に照らし適切な内容にすべき
- わかりやすく具体的に示す
- 専門用語を多用することなく、これを閲覧する消費者が理解できるように努めるべき
- 曖昧さは排除し、具体的な表現を使って解釈のずれが起こらないようにする
- テンプレートをそのまま使わない
- ネット上のテンプレートをそのまま活用するのは危険
- 最新の法規制、社会情勢、自社のサービス内容を踏まえて適切なものとなるよう一つひとつの条項を作成していく
また、一度作成した約款も法改正やサービス内容の変化により変更の必要性が生じることがあります。そのため定期的に見直すことも大切です。
定型約款には開示義務がある
定型約款を作成し、運用していく場合、民法の規定に従い相手方からの請求を受けたときはその内容を開示しなければなりません。
定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
消費者の持つこの権利は「定型約款の表示請求権」と呼ばれ、請求を受けた事業者は遅滞なく定型約款を示す義務を負います。
定型約款が閲覧できることは消費者に伝える
定型約款の表示請求権は、契約締結の前後に定型約款の記載内容をチェックする権利を保障するための重要な仕組みですが、そもそも消費者は請求権が存在していることを認識できていない可能性が高いです。
そこで事業者との取引ではないB to C取引においては、消費者が当該権利を行使できるよう、事業者に「定型約款の表示請求権について情報を提供する努力義務」が課されています。
相手方の求めがなくても、事業者側から進んで「ご要望がありましたら、メールで約款のデータをお送りします。」などの対応を取りましょう。
なお、定型約款の内容を容易に知り得る状態にしているなら、別途定型約款の表示請求権に関しての情報提供を行う必要はありませんので、この情報提供の努力義務も負いません。そのため「店舗の目につく場所に掲載する」「Webサイトのわかりやすい場所にリンクを表示する」などの措置を講じることも検討すると良いです。










