契約にないサービスを執拗に求められたら?全社的に必要な備え
お客さんとの応対の中で、「これもやってほしい」「こういう対応もお願い」などと契約の範囲を超えた要求を受けることもあります。どう対処すべきか判断に迷うこともあると思いますが、その場しのぎの対応ばかりだと根本的な解決にはなりません。
もし契約外の要求を執拗に求められるような場面に遭遇したらどうすべきか、適切な対処の考え方を整理しておきましょう。
その要求は本当に契約外か
まず必要となるのは、「求められていることが本当に契約の範囲を超えているか」の確認です。感覚的に「これはやりすぎだ」と判断してしまわず、契約書・注文書・見積書・メールのやりとりなど、双方の合意を示す記録も判断材料に加えるべきです。
ただ、記載が曖昧で判断しにくいケースもあるでしょう。
たとえば「一般的なアフターサポート」「必要に応じた調整」といった表現がなされていると解釈の幅が広がり、双方の認識がずれてしまいやすいです。このようなケースでは、契約締結時の経緯や過去に実際に行ったやりとりの内容なども加味して判断しましょう。
「契約外の過剰要求」の傾向
「提供内容が説明と異なる点について改善を求める」「誤った請求に対して返金を求める」「サービスの瑕疵について適切な補償を求める」といった申し出は正当な主張である可能性も高いです。
一方で、次のような形で主張が行われているときには不当な要求であることを視野に入れて対応を考えるべきです。
- 料金を変えずに追加作業や別サービスの提供を繰り返し求める
- 対応できないと伝えた後も同じ要求を繰り返す
- 土下座・謝罪文・担当者の交代などサービス内容と関係のない要求をする
正当な申し出には誠実に向き合わなくてはなりません。しかし、法令上や別途合意がない限り、契約で定めた範囲を超える要求にまで応じる義務はありません。
対応できないと明確に示す
要求内容が契約の範疇ではない、不当な要求、と判断してからは曖昧な対応を続けるべきではありません。「検討します」などとどっちつかずの態度を見せたのでは相手方も対応に困ってしまいます。
そこで、ただ拒否するのではなく「対応できる範囲を具体的に伝える」ことを意識すると良いでしょう。
- 「今回の契約では○○の範囲までの対応となっておりますので、△△の対応はいたしかねます。」
- 「ご要望の内容については、別途ご相談・お見積りとなります。」
一例に過ぎませんが、こうした伝え方をすれば攻撃的な態度を示すことなく、対応できない範囲の線引きが示せます。
また、一般的なポイントとして「記録を残すこと(要求内容、日時、対応内容を記録しておくと、トラブルが深刻化したときに役立つ)」や「担当者一人に対応させない(複数人で対応、上長が関与するなど組織的に対応していることを示す)」も押さえておきましょう。
カスハラへの対応は使用者の義務でもある
いき過ぎた要求がカスタマーハラスメントに該当することもあるでしょう。このカスハラに対しては、企業に法令上の対応義務が課せられます。
そのため事業主として適切な対応をしないことで従業員の負担を増やすだけでなく、自社が法令違反となってしまうリスクもあるのです。
事業主に求められる取り組みとしては、社内方針の策定・内部規程やマニュアルの整備、教育や研修の実施などが挙げられます。
たとえば「契約外のサービスには応じない」という方針を社内でルール化・周知しておくことは、義務化への対応としても、現場の守り方としても有意義といえるでしょう。
事業主の義務の内容に関しては、厚生労働省が公表している労働施策総合推進法の改正案内や、カスタマーハラスメント対策に関する指針・企業向けマニュアル等の資料も確認しておくと良いです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24067.html
また、自社の事業内容や現場の状況を踏まえた具体的な施策については、弁護士とともに検討していくこともおすすめします。
契約書の整備が根本的な対策になる
契約外の要求が発生したとき適切な対処ができるよう備えるのも大切ですが、不当な要求を予防することも大切です。
その観点から重要なのは「契約書の整備」といえるでしょう。
サービスの範囲が明確に書かれていないなど、契約書に不備があると対応範囲外の要求なども起こりやすくなります。そこで相手方との認識のすれ違いが起こらないよう、契約書に「対応する業務の範囲」「対応時間」「追加対応が必要な場合の費用や手続き」などを具体的に記載することを考えましょう。
もちろん、サービス内容や業務の実態に即した内容とすることが大切です。現在使っている契約書の記載内容に不安がある場合や、どう改善すべきか見えてこない、という場合には弁護士への相談もご検討ください。









