内部統制システムとは?会社法における構築目的やメリットなど
会社に対する高いコンプライアンス意識が要求されている中で、会社法上の内部統制システムを構築する要請も高まっているといえます。
特に、上場企業や上場を予定している企業については、その構築は必須のものとなっています。
そのため、構築目的やメリットなど、内部統制システム構築のための知識を得ておく必要があるといえます。
この記事では、内部統制システムとは何かについて、会社法における構築目的やメリットなども併せて解説していきます。
会社法上の内部統制システムとは
会社法上の内部統制システムとは、大まかに言うと会社の取締役に求められる、コンプライアンスや定款、法令等を遵守して業務を行えるように内部統制の体制を確立するよう務める行いのことを指します。
内部統制システムは、会社法上の大会社であって、取締役会が置かれている株式会社であるなど特定の要件を充足する会社であれば構築の義務が課せられています。
金融商品取引法においても内部統制システムの概念が存在しますが、こちらは主体が取締役会ではなく会社となっている、その目的が財務報告に関するものになっているなどの違いがあるため、区別しておきましょう。
内部統制システムの構築目的
内部統制の目的は大きく分けて4つです。
これらは、全てを達成することによって初めて意味をなすものだと言われています。
以下、それぞれについて見ていきましょう。
- 業務の有効性および効率性
会社がその事業における目的を達成するために、業務の有効性と効率性を確保することは大切です。
内部統制は、目的の達成経路・資産の分配等をより明確にするものであり、これによってこの目的を達成することが図られています。
- 財務報告における信頼性
投資家を含む株主や金融機関などは、企業の財務報告を見てその行動を決めています。
そのため、財務報告が不正確であるとこれらの者たちに損害を与えてしまうことになりかねません。
そのため、信用を確保するためにも、不正を防ぎ財務報告における信頼性を確保する必要があります。
- 事業活動に関わる法令遵守
企業は法令や公序良俗に反しない範囲で活動をする必要があります。
もしもこれらに違反してしまうと、罰則の対象となったり、信用が大きく毀損されてしまったりするリスクがあります。
そのため、法令遵守は厳格に行っていく必要があるでしょう。
- 資産の保全
資産は必要なときには利用するべきですが、無駄遣いや不正利用があってはならないものです。
資産を適切に保全し、会社の財務状況を健全なものに保っておくことが求められます。
内部統制システムの構成要素
内部統制システムは、6つの構成要素からできています。
以下、それぞれについて見ていきましょう。
- 統制環境
内部統制の目的達成を目指す雰囲気のことを統制環境といいます。
これは、上層部のみならず企業全体で共有されていなければなりません。
また、以下すべての要素の根幹に関わる重要な要素であるため、これの整備はとても大切になります。
- リスクの評価と対応
企業の運営に至っては必ずリスクは発生するものです。
そのため、リスクの大きさや可能性などを適切に評価し、回避や軽減、受容などの対応をする必要があります。
- 統制活動
適切な企業運営のためには、経営者の指示が企業全体に行き渡り、またきちんと実行される必要があります。
統制活動はそのための手続きを指し、権限付与・職務分配などが包含されます。
これを実現するためには、組織内の全員が遂行を心がける必要があります。
- 情報と伝達
企業に入ってくるさまざまな情報が正しく把握されて、企業全体や関係する者との間で適切に伝達できる状態になっていることを指します。
- モニタリング
内部統制システムは一時的に機能しているだけでは足りず、継続的に機能していなければなりません。
これを評価する過程のことをモニタリングと呼んでいます。
モニタリングには、普段から行われている日常的モニタリングと、それ以外の独立的評価の二種類が存在しています。
- ITへの対応
現在では、企業を運営する上でIT技術に対応することは不可欠となっています。
これに適切に対応することがITへの対応です。
業務内容がITに関連している場合だけでなく、企業の中でIT技術が情報システムなどの形で用いられている場合、この要素はかなり重要になってきます。
内部統制システムのメリット
内部統制システムを整備することには、以下のようなメリットがあります。
- 不正を防止できる
内部統制によって今一度社内のルールを見直すことができ、また社員同士の相互監視体制も徹底できるため、企業内で不正が起こることを防止できます。
そのため、企業の信用が向上するほか、不正や法令違反によって罰則を受けたり、刑事責任に問われたりするリスクも軽減することが可能です。
- 業務が効率的なものになる
内部統制によって業務の見直しや改善が行われるため、業務の整理や効率化が期待でき、結果として企業の業績を伸ばすことにつながります。
- 社内の士気が上がる
内部統制によって業務がより透明化されるため、社内でも業務への信頼性が向上し、社員ひとりひとりの負担も軽くなる傾向があります。
そのため、社内全体でモチベーションが上がることになります。
企業法務については法律事務所桃李にご相談ください
内部統制システムはすべての企業に必須とされるものではありませんが、義務化されている会社も多く、また義務がなくても整備することで大きなメリットを生み出すことができるものです。
内部統制システムの整備を考えているなど、企業法務についてお困りのことがある場合には、法律の専門家である弁護士への相談をおすすめします。
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