カスハラ対策が法律上の義務に!法改正を受けて会社がしないといけない対応
従業員のいる全事業者に対し、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が法律上の義務となります。未対応のままでは行政上および民事上のリスクが生じるため、消費者との取引がある事業者は、必要な措置を早急に把握して対処していく必要があります。
カスハラ対策の義務化と事業者にとってのリスク
改正労働施策総合推進法により、カスハラ対策はパワハラやセクハラと同列の雇用管理上の措置義務となりました。
従業員が1人でもいるなら規模を問わず全事業主が改正法の適用対象であり、業種・業態による例外はありません。
そして義務に違反した事業主には、行政による報告徴求命令や助言、指導、勧告のほか、企業名の公表という措置(ペナルティ)も想定されています。
企業名公表は、採用やブランド面への打撃となってしまうでしょう。加えて、労働契約法上の安全配慮義務違反として被害を受けた従業員から損害賠償請求を受けるリスクも生じます。
義務として定められた具体的な措置
事業主が講じるべき義務の内容は、改正法に基づく指針によって定められています。大事なポイントは押さえておきましょう。
方針の明確化と社内への周知・啓発
カスハラには毅然と対応して従業員を守る旨の方針を定め、社内報やイントラネット掲載等を通じて周知・啓発することが義務付けられています。
「どのような行為がカスハラに当たるか」と「その対処方法」も具体的に定め、従業員に周知しなければなりません。
対処方法の例としては、顧客とのやり取りの録音録画、管理監督者への報告、一定時間経過後の退店要求や終話の告知、犯罪に該当し得る言動には警察への通報、弁護士との連携、などが挙げられます。
相談ができる体制を整える
被害を受けた従業員が申告できる窓口を設置し、その存在を周知することも義務付けられています。
カスハラへの該当性が微妙なケースも含めて対応できるよう、担当者向けのマニュアル整備や関係部門との連携体制の構築も行いましょう。
また、形式的に窓口を置くだけでは不十分で、実際にそれが機能するかどうかまで問われる点に留意すべきです。
事後の迅速かつ適切な対応
相談があったときは事実関係を迅速に確認し、カスハラが認められるなら速やかに被害者への配慮措置を講じることが義務とされています。
具体的には、管理監督者が被害者に代わって対応にあたる、複数人対応への切り替え、配置転換、警察への通報といった措置です。また再発防止に向けた取組も義務の対象です。
プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
各措置に際して、相談者のプライバシー保護の措置を講じ、その旨を従業員へ知らせることが義務付けられています。
カスハラ相談をしたことや事実確認に協力したことを理由とした解雇その他の不利益取扱いをしない旨を定め、従業員に周知・啓発することも義務の一つです。当然、不利益な取り扱いを実際に行わないことも求められます。
努力義務として推奨される取組
義務ではないものの、「取り組むことが望ましい」とされる努力義務の規定もあります。
その主な内容は、顧客対応力向上のための研修の実施、義務措置の運用状況を労働者代表や衛生委員会などの参画も得て定期的に見直すこと、業種・業態の特性に応じた独自の取組などです。
また、自社以外の者(他社社員やフリーランス等)がカスハラ被害を訴えた場合に適切な対応に努めることや、自社の労働者が加害者となった場合に被害者側事業主からの協力依頼に応じるよう努めることも規定されています。
なお、協力依頼を理由に取引を解除するなどの不利益取扱いを行うことは、指針上「望ましくない対応」として明記されています。
会社がこれから整えるべき体制
義務の内容を形式的に満たすだけでは実効性がありません。
「どの行為がカスハラに当たるのか」「誰がどのように対応するのか」「対応困難な事態にはどう動くのか」を自社の実態に合わせて落とし込む必要があります。その上で、アルバイトやパートを含む全従業員に浸透させることが不可欠です。
まだ対応が進んでいない会社がまず押さえておきたい実務上のポイントは、以下のとおりです。
- カスハラ該当性の最終判断者(店長や管理職等)と、警察・弁護士への連携基準を明確にしておく
- 事案発生時の録音録画や報告書による記録を徹底し、再発防止と同種事案への組織的対応に活用できるよう備える
- 派遣社員やアルバイトを含め、全社的に周知や研修を行い、対応方針を組織全体に浸透させる
整備にあたっては、厚生労働省が公表している業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアルも実務上の参考資料として活用できますし、より実効性を確保するには弁護士への相談も有効です。









