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消契法第8条に違反する契約内容とは?無効になる条項の例とともに解説

消契法(消費者契約法)では、交渉力や情報量に差がある事業者-消費者間の契約において、消費者被害等が発生しないようにいくつかのルールを設けています。

 

その1つが「不当な契約条項が無効になるルール」です。

 

無効になる条項にもいくつかのパターンがありますが、ここでは同法第8条に規定されている“事業者の損害賠償責任の免除”をピックアップし、無効となる条項について具体例を交えて解説していきます。

 

消契法による無効になる可能性がある例

まずは、消契法の規定に従い、契約書に定めたとしても無効になる可能性が高い条項の例を以下に示します。

 

例1)

「いかなる理由がある場合でも、一切損害賠償責任を負わない。」

例2)

「責めに帰すべき事由が事業者にある場合でも、一切責任は負わない。」

 

債務不履行や不法行為も含み、幅広く損害賠償責任について免除をする規定は、同法第8条第1項第1号・第3号に該当することで無効となります(各号の詳細は後述)。

 

例3)

「いかなる場合も、事業者の負う損害賠償責任は〇〇円までとする。」

例4)

「事業者は、物的な損害に関して、責任を一切負わない。」

 

これらの例に関しては、部分的には責任を負うことを定めています。しかしながら、事業者側の故意や重過失によって発生した損害賠償責任も制限することになっており、この条項も無効となります。

 

なお、上記は比較的わかりやすい例ですが、実際には次のように判断が難しいケースもあります(さいたま地裁R2.2.5)。

 

  • 事例
    → ゲームのポータルサイト運営業者を被告に、「所定の要件の下で利用者の会員資格を取り消したとき、利用者に損害が生じても賠償しない」旨の条項をめぐって争いが生じた。
  • 裁判の結果
    → 被告による会員資格の取消しに関して、事業者側に広い裁量があると思われること、また要件に明確性がないことを踏まえると、当該免責条項は「損害賠償責任のすべてを免除するもの」と解釈する余地がある。また、当該条項に関して事業者が有利な解釈に依拠して運用しているとの疑いが払拭できない。などと判断された結果、消契法に規定に従い原告の請求が一部認容された。

 

免責に関わる条項を設けるとき、有効・無効の判断が難しいなら弁護士に相談して内容の検討を進めましょう。

 

消契法第8条に基づく無効の条件

消契法第8条第1項では、“次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。”として第1号~第4号までを掲げています。

 

簡単に整理すると、第1号および第3号では「損害賠償責任を一切負わないとする規定」を無効としており、第2号および第4号では「故意・重過失がある場合でも責任を制限する規定」を無効としています。

 

条文の内容と照らし合わせながら、それぞれ以下で解説します。

 

「損害賠償責任を一切負わない」規定

同項第1号では「債務不履行」を原因とする損害、同項第3号では「不法行為」を原因とする損害に関して、それぞれ一切の責任を免除する契約条項を無効としています。

※債務不履行とは、義務を果たさないことを意味する。

※不法行為とは、故意や過失で他人の利益や権利を侵害することを意味する。

 

事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項

引用:e-Gov法令検索 消費者契約法第8条第1項第1号

 

消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項

引用:e-Gov法令検索 消費者契約法第8条第1項第3号

 

 

この規定により定めた条項が無効になった場合、損害賠償責任に関して何も特約がなかったものとして扱われます。そこで事業者は、民法で定められた原則通り(民法第415条・第416条等の規定)に責任を負います。

※この条項が無効になっても、「いかなる理由があっても事業者がすべての責任を負う」ことにはならない。

 

また、条文では“当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項”についても無効になると明記されています。これはつまり、「事業者があとから責任の有無について決めることができる」旨の条項を指しています。このような条項があると、結局全責任の免除を定めているのと同じ状態にできることから、無効になると定められています。

 

「故意・重過失がある場合でも責任を制限する」規定

同項第2号では「債務不履行」を原因とする損害、同項第4号では「不法行為」を原因とする損害に関して、それぞれ事業者に故意または重過失があるにもかかわらず責任を制限する契約条項を無効としています。

 

事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項

引用:e-Gov法令検索 消費者契約法第8条第1項第2号

 

 

消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項

引用:e-Gov法令検索 消費者契約法第8条第1項第4号

 

 

軽過失による債務不履行や不法行為に比べ、故意に基づく行為、重大な過失に基づく行為があるときはより帰責性が重いと考えられています。そのため責任の制限を認めず、民法の原則通りに責任を負わせるために、これらの規定が置かれています。

 

なお、「故意」とはあえてその行為をすることを意味しますので、「わざと」した行為に対して故意が認められます。

 

そして「過失」はミスを意味するところ、「重大な過失」については「注意をしていれば容易に結果を予測できたのに、漫然看過したといえるような、著しい注意欠如の状態」であると解釈されます。

 

そのほか、以下の点にも留意してください。

 

  • “当該事業者、その代表者又はその使用する者”とは
    → 法人、法人の代表者(代表取締役など)、法人の従業員を指す。
  • “一部を免除”とは
    → 事業者が責任を一定限度に制限して、一部分のみの責任を負うことを指す。「〇〇万円まで」など。

 

契約書の作成は弁護士にご依頼ください

契約書に規定する一つひとつの文言について意識して調整していくのは大変な作業です。配慮すべきは消契法だけではありませんし、さまざまな観点から評価し、契約書のレビューを行わないといけません。

 

しかも、法律は改正も繰り返されており、常に最新の情報を追っていかないといけません。企業の方がすべてに対処していくのは困難ですが、弁護士に相談・依頼することでこの問題を解決することができるでしょう。

 

消費者問題に強い弁護士なら、同法の規定に基づいて無効となってしまうようなリスクを排除するとともに、企業が不利にならないように調整した契約内容を提案することもできます。消費者と大きなトラブルが発生する前に一度契約内容を見直しましょう。

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  • 所属団体
    • 大阪弁護士会所属
    • 大阪弁護士会消費者保護委員会委員および裁判員本部委員
    • 刑事弁護委員会委員
    • 大阪大学法曹会幹事
    • 大阪青年会議所
  • 経歴

    大阪大学法学部卒業

    2005年(平成17年)11月 司法試験合格

    2006年(平成18年)4月 司法修習生(60期)

    2007年(平成19年)9月 大阪弁護士会に弁護士登録

    2015年(平成27年)7月 岡本仁志法律事務所開設

    2020年(令和2年)7月 法律事務所桃季開設

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