企業が特定商取引法に違反するリスクについて解説
特定商取引法は、事業者による悪質な勧誘などを防止して消費者を守るための法律です。特定の営業方法にて、つきまとって販売を繰り返したり誤った情報を伝えて販売をしたり、誇大広告をしていたりすると同法に抵触してしまいます。
このような違法行為は、消費者が困るだけでなく企業自身のリスクにもなるため注意しましょう。具体的にどのようなリスクがあるのか、当記事で紹介します。
法律で規定された罰則等が適用される
特定商取引法に違反することで、同法所定の罰則などが科されることがあります。
ですが、いきなり刑罰を科されるわけではなく、通常は「業務改善の指示」を受けるところから始まります。これは同法に抵触している状態を是正するよう行政が指示をしてくる、といった処分内容です。
また、行政からの指示に従わなかったり悪質な行為をしたりしていると「業務停止命令」を受けることもあります。この命令が下されると一定期間事業を止めなくてはならず、その間営業や販売などができなくなるため企業は大きな損失を被ることになるでしょう。
特に悪質なケースでは刑罰も予定されているため注意してください。法人に対しては最大数億円もの「罰金刑」が科されることもあります。
役員に特に悪質な行為が認められるときは、その個人に対し「罰金刑」や「懲役刑」も予定されています。行為の内容にもよりますが、罰金刑については最大300万円、懲役刑については最大3年が科されます。
ブランドイメージが損なわれる
特定商取引法に違反した結果、企業のブランドイメージが損なわれる可能性があります。
企業が長年築き上げてきた信頼や評判、消費者からのイメージが一気に変わってしまうリスクがあり、しかもいったんイメージが悪くなってしまうとその後改善するのは簡単ではありません。
特に近年は、違反行為が明るみに出た瞬間からSNSを通じて情報が急速に拡散されてしまいますし、その情報が残り続けてしまいます。
消費者からのクレームが発生する
特定商取引法は消費者保護を主目的とした法律であり、これに違反するということは消費者との間でトラブルが起こっている、あるいは起こりそうな状況を意味しています。
そこで違反行為をきっかけに行政からの処分を受けるほか、消費者からのクレームが発生する危険性があります。そうするとその対応に従業員等の時間・労力を割かなくてはならず、本来の業務に支障が出てしまうかもしれません。
返金や損害賠償の負担が発生する
特定商取引法への違反がきっかけで、契約に際して交わした金銭の返金対応であったり、消費者に発生した損害への賠償義務が生じたりすることもあります。
多額の返金や賠償金が必要となればキャッシュフローがひっ迫し、経営に大きな悪影響を及ぼしかねません。
また、返金や損害賠償への対応に向けた法的手続きや交渉も必要となりますので、それに伴う時間やコストの負担も無視はできません。法的な争いが長引けばそれだけ企業の負担は大きくなり、その影響は多方面に広がっていくことでしょう。
そこで金銭的な負担を完全に避けることができないにしても、弁護士に相談・依頼するなどして、一早く問題を解決するよう努めてください。
取引先との関係が悪化する
特定商取引法への違反は、直接的には消費者からの信用問題に関わる問題ですが、その事実を知った取引先との関係性が悪化するリスクもはらんでいます。
違反行為が特に重大・悪質であった場合、「○○社と取引を交わすことで自社にも悪い影響が及ぶのではないか」と心配し、リスク回避のため取引を縮小または停止する可能性があるのです。
このような問題が起こると事業を継続するために必要な供給などが受けられなくなるなど、将来にわたり大きな損失を被ることになるでしょう。信用を失うと新たな取引先の開拓も難しくなり、安定した事業活動ができなくなってしまいます。
社内の士気が下がる
法令違反により企業の雲行きが怪しくなってくると、自社で従事している従業員のモチベーションも下がってしまいます。
その結果、生産性が低下してしまうだけでなく離職者が増えてしまうかもしれません。優秀な人材を失うと、その影響を受け企業の競争力も下がってしまうでしょう。そこでこのような事態にまで発展しないよう、できるだけ早く対処することが大事です。自社だけで対応するのが難しい場合は法務・消費者トラブルに強い弁護士を頼ってください。