【特商法に注意】特定商取引法に違反したときのペナルティとは
特商法で規制されている一定の行為をしてしまうと、ペナルティを課せられることがあります。そのため事業を行っている方は常に消費者側の目線も持ち、同法違反となる行為をしてしまわないように気をつけなければなりません。
この記事で、特商法の内容や規制されている行為の具体例、そしてペナルティの内容について詳しく解説していきます。
特商法とは?
特商法とは「特定商取引に関する法律」のことで、「特定商取引法」と略されることもあります。
同法の目的は、「事業者による違法または悪質な行為を防止すること」そして「消費者の利益を守ること」にあります。
通信販売や訪問販売などの行為はトラブルが発生しやすいところ、こうした一定類型の取引につき事業者へ規制をかけるとともに、消費者を保護する制度の整備をしているのです。
例えば以下のようなルールが同法で定められています。
- クーリングオフ
契約の申込・締結後、法定の書面を受領してから一定の期間内であれば解約ができるという制度。訪問販売や電話勧誘販売、特定継続的役務提供であれば8日、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引であれば20日以内と規定 - 意思表示の取消し
事業者が不実告知、あるいは故意の不告知をしたことにより消費者が誤認したのであれば、契約の申込・承諾等の意思表示を取消すことができると規定 - 損害賠償額の制限
消費者のする中途解約に対する損害賠償額に上限を設ける
特商法で対象となっている取引
特商法の適用を受ける取引を下表に示します。
特商法で規制されている一定の行為をしてしまうと、ペナルティを課せられることがあります。そのため事業を行っている方は常に消費者側の目線も持ち、同法違反となる行為をしてしまわないように気をつけなければなりません。
この記事で、特商法の内容や規制されている行為の具体例、そしてペナルティの内容について詳しく解説していきます。
特商法とは?
特商法とは「特定商取引に関する法律」のことで、「特定商取引法」と略されることもあります。
同法の目的は、「事業者による違法または悪質な行為を防止すること」そして「消費者の利益を守ること」にあります。
通信販売や訪問販売などの行為はトラブルが発生しやすいところ、こうした一定類型の取引につき事業者へ規制をかけるとともに、消費者を保護する制度の整備をしているのです。
例えば以下のようなルールが同法で定められています。
- クーリングオフ
契約の申込・締結後、法定の書面を受領してから一定の期間内であれば解約ができるという制度。訪問販売や電話勧誘販売、特定継続的役務提供であれば8日、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引であれば20日以内と規定 - 意思表示の取消し
事業者が不実告知、あるいは故意の不告知をしたことにより消費者が誤認したのであれば、契約の申込・承諾等の意思表示を取消すことができると規定 - 損害賠償額の制限
消費者のする中途解約に対する損害賠償額に上限を設ける
特商法で対象となっている取引
特商法の適用を受ける取引を下表に示します。
特商法が適用される取引 | 詳細 | |
---|---|---|
訪問販売 | 定義 | 事業者が、営業所以外の場所、消費者の自宅などに訪問し、商品や役務の提供等に関する契約をする取引 |
問題点 | 消費者が求めていないタイミングで勧誘を受けること、不意打ち性が高いこと | |
具体例 | 消費者の自宅にセールスマンが訪問して行う販売方法が一般的、その他カフェや路上での販売、どこかの会場を一時的に借りて行われる展示販売なども該当 | |
通信販売 | 定義 | Web等で広告し、電話等の通信手段で申込みを受ける取引 ※後述の、電話勧誘販売に該当するものは除く |
問題点 | 商品や販売の条件を対面で確認できないこと | |
具体例 | 新聞やテレビなどを通じて広告し、消費者が電話やメールを使って申し込みを行う。その他宅配便やオンライン上での申し込みなども含む | |
電話勧誘販売 | 定義 | 電話による勧誘、申込みを受ける取引 |
問題点 | 消費者が求めていないタイミングで勧誘を受けること、不意打ち性が高いこと | |
具体例 | 事業者から電話をかける、あるいはビラやパンフレットを用いて消費者側から電話をかけさせることをきっかけに商品の購入・役務提供等を約する行為 | |
連鎖販売取引 | 定義 | 消費者個人を販売員として勧誘し、さらに当該個人に販売員勧誘を行わせる。これを連鎖的に行い拡大していく取引 「マルチ商法」とも呼ばれる |
問題点 | ビジネスに慣れていない個人を巻き込むこと、個人に儲けが出ず高額商品の購入代金が返済不能になること | |
具体例 | 以下の3要件を満たす必要がある 1:商品の販売、役務の提供を行う事業であること 2:新規会員の勧誘で利益が入ると誘引すること 3:加入に際して支払う商品代や入会金などの特定負担を伴うこと | |
特定継続役務取引 | 定義 | 長期的継続的な役務の提供をし、これに高額な対価が伴う取引 |
問題点 | 長期的に大きな負担を伴うこと | |
具体例 | 知識や技能の向上、身体の美化といった、目的の実現が不確実なものであって、一定期間以上・一定金額以上で提供される 対象は、①エステ、②美容医療、③語学教室、④家庭教師、⑤学習塾、⑥パソコン教室、⑦結婚相手紹介サービスの7つ | |
業務提供誘引販売取引 | 定義 | 収入が得られるとの口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして商品等を売ることで金銭の負担を負わせる取引 「モニター商法」とも呼ばれる |
問題点 | ビジネスに慣れていない個人を巻き込むこと、個人に儲けが出ず高額商品の購入代金が返済不能になること | |
具体例 | 「在宅のサイドビジネスで毎月高収入が入る」「商品の購入をしてくれれば継続的にモニター料を支払う」などと誘い、商品の購入・役務の提供等の契約をさせる 以下3要件を満たすと規制対象に 1:商品の販売や役務提供を行う事業であること 2:業務の提供に対し収入が入ると誘うこと 3:消費者側が金銭的な負担を負うこと | |
訪問購入 | 定義 | 事業者が消費者の自宅等を訪問し、営業所等以外で物品の購入を行う取引 |
問題点 | 消費者が求めていないタイミングで勧誘を受けること、不意打ち性が高いこと | |
具体例 | 物品購入を業とする業者が、消費者から売買契約の申込みを受け、物品を購入する 流通が害されるおそれのある自動車や書籍、CD・DVD、ゲームソフト、有価証券などが対象 売主のリスクが小さい家電や家具などは対象外 |
特商法で違反とされる主な行為とは?
特商法では前項で挙げた取引が特に規制されるとともに、以下の行為をしてしまうと同法違反としてペナルティを課せられることが法定されています。
1. 契約書を交付しない
特商法では契約締結の場面で重要事項を記載した書面の交付を義務付けている
交付する書面には、取引のタイプに応じた特定事項を記載しなければならない
商品提供が目的の訪問販売であれば以下
- 商品の種類・名称・型式・商標または製造業者名・数量
- 金額
- 支払の時期と方法
- 商品の引渡時期
- 契約解除に関する事項
- 事業者の名称・住所・電話番号・代表者の氏名
- 担当者の氏名
- 契約の申込また締結の年月日
2. 消費者の意思に反する行為
拒絶の意向を示している消費者に対し、勧誘を続けること
そこで事業者には、販売に際して勧誘を受ける意思があるかどうか、確認することが求められる
3. 消費者の意思を確認しないまま広告メールを送りつける
「オプトイン規制」と呼ばれ、事業者からの広告の送信は、消費者が事前の承諾をしていないのであれば送ってはいけない
ただし、以下の場合は適用されない
- 注文確認や発送通知等に付随する広告
通知内容の一部に含まれる分には許される - メルマガに付随する広告
消費者の承諾を得て送信するメールの一部に広告が含まれていても許される - フリーメールに付随する広告
無料でメールアドレスが取得できる代わり、その条件として広告が掲載されるとすることは許される
4. 虚偽や威迫により困惑させる
契約を解除させないよう、嘘をついたり威迫したりする不当な行為は禁じられる
5. 日常生活で必要とされる限度を超えた販売
通常必要とされる分量・回数・期間等を著しく超えて販売すること、役務の提供を受けるなどの契約は禁じられる
ここでの限度については、個別の事情に鑑み、社会通念に照らして判断される
特商法に違反した場合どのような措置がある?
特商法に違反してしまうと、以下で説明するような行政処分を受ける可能性があります。
管轄庁等から是正指導がある
同法第3条に規定の「氏名等の明示」、第3条の2に規定の「再勧誘禁止」第4条や第5条に規定の「書面交付」といったルールに反し場合、業務改善指示を受けることがあります。
主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が第三条、第三条の二第二項若しくは第四条から第六条までの規定に違反し、又は次に掲げる行為をした場合において、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、当該違反又は当該行為の是正のための措置、購入者又は役務の提供を受ける者の利益の保護を図るための措置その他の必要な措置をとるべきことを指示することができる。
引用:特定商取引に関する法律 第7条柱書(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=351AC0000000057)
また、条文にあるように、「次に掲げる行為」をした場合にも同様の措置が取れる旨規定されています。「次に掲げる行為」には、例えば「訪問販売に関する売買契約等に基づく債務」の履行拒絶あるいは不当な遅延などが含まれます。
管轄庁等から業務停止命令がある
違反行為があった場合において、指示をするにとどまらず業務停止命令を受ける可能性もあります。こちらは同法第8条に規定が置かれています。
主務大臣は、販売業者若しくは役務提供事業者が第三条、第三条の二第二項若しくは第四条から第六条までの規定に違反し若しくは前条第一項各号に掲げる行為をした場合において訪問販売に係る取引の公正及び購入者若しくは役務の提供を受ける者の利益が著しく害されるおそれがあると認めるとき、又は販売業者若しくは役務提供事業者が同項の規定による指示に従わないときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、二年以内の期間を限り、訪問販売に関する業務の全部又は一部を停止すべきことを命ずることができる。
引用:特定商取引に関する法律 第8条第1項抜粋(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=351AC0000000057)
最大2年もの業務停止処分を受ける可能性があり、事業者としては重大な損失を被ることとなるでしょう。また、短期間、一部の業務のみの停止であったとしてもこの処分を受けたことが周知されることで消費者の信頼を落としてしまいます。そのため必ず同法に反する行為はしないように留意しましょう。
特商法に違反した場合の刑罰とは?
特商法違反に対しては、上で述べたような行政処分だけではなく刑罰も予定されています。
懲役や罰金が科せられる可能性がある
同法では訪問販売や通信販売に関する不実の告知などに対し「3年以下の懲役または300万円以下の罰金またはそれらの併科」が科されることがあります。
※法人に対しては3億円の罰金が科される可能性もある
また、書面の交付等につき違反があったときには「6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金またはそれらの併科」が適用されるかもしれません。
不実の告知をした場合に比べると法定刑は軽くなっていますが、それでも実刑を受けるリスクがあることは理解して業務に取り組む必要があるでしょう。
状況によって詐欺罪に問われるケースもある
同法で規定されているわけではありませんが、事業者による行為が刑法に抵触する可能性があることも理解しておきましょう。
特定の取引を行っている事業者は特に特商法に配慮すべきですが、特商法だけに配慮すれば良いというわけではありません。当然、誰もが守るべき法令は遵守しないと様々なペナルティ・刑罰を与えられることがあります。
特に特商法に関連して起こり得るものとしては詐欺罪としての立件です。
虚偽の説明をして消費者を騙し、本来締結するはずでなかった契約を締結させたときには詐欺罪に該当し得ます。
詐欺罪が成立し有罪判決が下されると、最大10年もの懲役刑に付されます。詐欺罪には罰金刑が予定されておらず、その意味で実刑判決となるリスクが大きいとも考えられます。実刑となり刑務所に入ることとなれば事業の停止どころではなく日常生活における身体の自由すらなくなってしまいます。
特商法違反で連絡が来た場合には当事務所にご相談ください
「特商法違反の疑いで呼び出された」という場合、法律の専門家である弁護士を頼ることが大切です。早期に相談をして、適切な対応を取ることでその後の結果も変わってきます。
行政処分として指示を受けるだけであれば比較的影響は小さく抑えられますが、業務の停止、さらには刑罰が科されるリスクもありますので、特商法の違反に関する連絡がきたという方は当事務所にご連絡ください。ご本人が直接対応するより、経験豊富な弁護士が対応することで示談交渉の成立から不起訴処分も獲得しやすくなります。