特定商法取引法違反による行政処分や刑事罰の内容
特定商取引法(「特定商取引に関する法律」のこと。「特商法」とも呼ばれる。)では、消費者の利益を守るためにいくつかの取引類型を規制しています。
同法のルールに従わないときは行政処分としての業務停止命令を受けたり、罰金刑などの刑事罰に処されたりすることがありますので注意しましょう。
特定商取引法に基づくペナルティの内容について、ここで紹介していきます。
特定商法取引法に違反する行為
特商法では以下に列挙する取引方法についてルールを設けており、各取引に関するルールを守らないときは業務改善の指示を受けたり業務停止命令を受けたりすることがあります。
以下にまとめた取引自体は違法な行為ではありませんが、厳しく営業の仕方について規律されていますので注意が必要です。
具体的にどのような行為をするとペナルティを課されてしまうのか、取引類型別にいくつか例を挙げていきます。
取引類型 | ペナルティを課される行為例 |
---|---|
訪問販売 | ・しつこく何度も勧誘を行う ・つきまとって販売を続ける ・事業者名を隠して営業をする ・間違った情報を伝えて営業をする ・明らかに消費者の必要量を超えた販売を行う ・申込書、契約書等の書面を交付しない ・クーリングオフをしようとする消費者の妨害をする |
通信販売 | ・誇大広告をしている ・メール等による広告を拒絶する消費者に対しても宣伝を続ける ・真実でない情報を伝えて販売した ・事業者名などの明示すべき情報を掲載していない ・申込手続で最終確認ページを設けていない |
電話勧誘販売 | ・しつこく何度も勧誘を行う ・事業者名を隠して営業をする ・間違った情報を伝えて営業をする ・明らかに消費者の必要量を超えた販売を行う ・消費者の判断力が不足していることに乗じて契約させる ・申込書、契約書等の書面を交付しない ・クーリングオフをしようとする消費者の妨害をする |
連鎖販売取引 | ・誇大広告をしている ・事業者名などの明示すべき情報を掲載していない ・不確実な事柄について「絶対儲かる」などと伝えた ・消費者の判断力が不足していることに乗じて契約させる ・申込書、契約書等の書面を交付しない ・契約解除をしようとする消費者の妨害をする |
特定継続役務取引 | ・誇大広告をしている ・消費者の判断力が不足していることに乗じて契約させる ・間違った情報を伝えて営業をする ・申込書、契約書等の書面を交付しない ・契約と同時に購入させた関連商品についてクーリングオフに応じない ・財務内容についての確認を消費者が求めたが拒否をした |
業務提供誘引販売取引 | ・誇大広告をしている ・事業者名などの明示すべき情報を掲載していない ・間違った情報を伝えて営業をする ・不確実な事柄について「絶対儲かる」などと伝えた ・申込書、契約書等の書面を交付しない ・消費者の知識、経験、財力を鑑みて明らかに適当とはいえない・適性がないにもかかわらず勧誘を行った |
訪問購入 | ・消費者が求めていないのに査定を超えた勧誘を行った ・間違った情報を伝えて営業をする ・つきまとって販売を続ける ・事業者名などの明示すべき情報を掲載していない ・消費者の判断力が不足していることに乗じて契約させる ・第三者への物品引渡しに際して必要な通知を怠った |
特定商取引法違反によるペナルティの内容
上に挙げた行為例のような特商法違反、その他悪質な行為があった場合は「業務改善の指示」「業務停止命令」「役員個人に対する業務禁止命令」「刑事罰」などのペナルティを受ける危険性があります。
業務改善の指示を受ける
「業務改善指示」は、その名の通り業務内容について特商法違反とならないよう改善すべきことを指示する処分のことです。
ペナルティの中では比較的軽い処分といえますが、業務改善指示が実施されたことを監督官庁が必ず公表する運用になっていますので、社会的な信用が毀損するという意味では軽視することはできません。
業務停止命令を受ける
「業務停止命令」は、事業活動を一時的に止めるよう命ずる処分です。一定期間に限って業務停止命令は下されますが、甚大な影響を受ける可能性も高いです。
場合によっては業務停止命令をきっかけに倒産することもあります。
停止期間については、比較的違反内容が軽い事案に対して「3ヶ月」と指定されることもありますが、重大な事案については「15ヶ月」や「21ヶ月」などと長い期間を指定されることもあります。1年以上、2年近くの業務停止は中小企業に限らず大ダメージを受けることになるでしょう。
役員等が業務禁止命令を受ける
前項の業務停止命令は法人そのものに対する措置ですが、取締役などの役員等個人が業務禁止命令を受けることもあります。
このとき、「もうこの会社は継続できなさそうだから、同じ事業を別で立ち上げてそちらで再始動しよう」などと考えても、実施することはできません。
刑事罰を受ける
上記のペナルティはいずれも行政上の処分です。これに対して、より悪質な行為をはたらいた者に対しては刑事罰も予定されています。
例えば次のように罰則が定められています。
- 100万円以下の罰金刑
・・・虚偽広告や誇大広告をした - 6ヶ月以下の懲役刑 または 100万円以下の罰金刑
・・・立入検査の妨害、書面交付の義務に違反した、行政からの指示に違反した - 3年以下の懲役刑 または 300万円以下の罰金刑
・・・不実の告知や事実の不告知、業務停止命令・業務禁止命令に違反した
最悪の場合実刑となり刑務所に収容される危険性もあります。
また、罰金刑は民事上の損害賠償責任とは別物ですので、被害者がいるときは別途金銭の支払いが必要になることもあります。
なお、違反行為をはたらいた個人だけではなく法人に対する罰金刑も予定されています。
この場合は「1億円以下の罰金刑」や「3億円以下の罰金刑」であるなど、通常の罰金刑に比べて金額がかなり高く設定されています。
特定商取引法に関する対策は当事務所にご相談ください
罰金刑の額が増額したり、行政処分が課される範囲を広げたり、新たな罰則を設けたり、特商法違反に関するペナルティについては法改正により厳罰化の流れが進んでいます。
業務改善指示などの制裁であっても評判が落ちることで再起不能な悪影響を受けるおそれがありますので、どのようなペナルティも受けないように取引を行うべきです。
どのような行為を避けなくてはならないのか、何を改善する必要があるのか、具体的なアドバイスが必要な場合は消費者トラブルに強い弁護士を頼りましょう。