消費者契約法を理由に契約取り消しを言われた!企業の対処法を解説
消費者との契約が多い業種だと、トラブルも比較的起こりやすいです。よく理解しないままサービスの申し込みや商品の購入をしてしまうことがあり、後になって「やっぱりキャンセルしたい」といってくることも珍しくありません。
企業はすべての求めに応じる必要はありませんが、消費者契約法には留意してください。消費者に取消権が認められることもあります。ではどのように対処すべきか、予防策とともにここで紹介いたします。
消費者契約法の概要
消費者契約法は、消費者を守るための法律です。
事業者と消費者には交渉力や持っている情報にも差があり、こうした差が原因となり強引に契約を交わされたり、認識と異なる内容の契約を交わすことになってしまったりすることもあります。こうした契約トラブルを避け、あるいは契約トラブルに巻き込まれたあとでも消費者が被害を受けないように、同法で特別なルールを設けているのです。
消費者から契約の取り消しを求められることがある
消費者契約法では、一定の場合、消費者に「取消権」を認めています。
事業者から不当な勧誘を受けたり、誤認や困惑を逆手に契約をさせられたりしたとき、後からでもその契約を取り消すことができるようになっています。
《 消費者から取り消しを求められるケース 》
- 重要事項に関する不実告知(事実と異なる情報を伝えて不安をあおり契約させる)
- 断定的判断の提供(実際には不確実なものを“絶対”などと表現して契約させる)
- 不利益事実の不告知(消費者にとって不利な情報をあえて伝えずに契約させる)
- 事業者の不退去(契約してくれるまで消費者の自宅から帰らない)
- 消費者の退去妨害(契約してくれるまで店舗から帰さない) など
このような事情があるときは、いったん契約を有効に成立させることができても、消費者側の権利主張により締結がなかったことになるかもしれません。
契約取り消しを主張されたときの対処法
契約を取り消したいと消費者から求められた場合、まずは事実確認、そして取消事由に該当するかどうかの評価を行いましょう。
従業員がした行為の確認
消費者から契約の取り消しについて求められたときは、まず自社の従業員がどのような方法で勧誘・営業を行っていたのか、事実確認を行いましょう。
従業員自身へのヒアリングも重要ですが、双方の言い分に食い違いが生じることも起こり得ます。そのため客観性のあるデータを用いて確認を行うことが大事です。
監視カメラに様子が写っていないか、勧誘をしたときの音声データが残っていないか、メッセージのやり取りから読み取れることはないか、さまざまな視点から確認を進めていきましょう。
取消権行使の正当性を評価
事実確認を進めつつ、消費者契約法に照らして、本件で取消権が発生するのかどうかを評価しましょう。その判断は簡単ではありませんので、消費者トラブルに精通した弁護士にご相談ください。
例えば、異なるブランドメーカーを伝えていた場合などには不実の告知があったと簡単に判断できますが、「この商品は軽量で、女性にも合いますよ」という表現をしていたときはどうでしょうか。
軽くて女性に適しているかどうかは主観的な評価ですので事実と異なることを告げたとは言い難いです。不実の告知にあたらなければ取消事由にもあたらず、消費者の主張に従う義務はありません。
感情的になった消費者から「取り消せるはずだ」などと主張されることもありますが、企業としては慌てず、冷静に法的な評価を行う必要があります。
取り消しリスクを避けるための予防策
消費者契約法に基づく取消権、消費者とのトラブルが発生しないように予防しましょう。仮に取消を拒絶することができたとしても、グレーな行為が多いと消費者からの信頼を失ってしまい、評価を落とし、長く事業活動を続けることができなくなってしまいます。
そこで、従業員(特に営業スタッフ)には消費者契約法に関する研修を受けてもらい、一度適切な営業方法と不適切な営業方法についてしっかりと認識を持ってもらいましょう。弁護士に指導をお願いする、あるいは営業方法をチェックしてもらい問題点を確認してもらう、といった対策も有効です。
その指導も1回で終わらせることなく、定期的に実施することが大事です。常々勧誘に対しては法令上の規制を意識してもらい、違法性について見なおす機会を設けましょう。消費者契約法によって契約書内の条項が無効となるケース(高額なキャンセル料の定めなど)もありますので、契約書もひな形の流用を続けるのではなく定期的にチェックしてください。
法律が改正されることもありますが、定期的な見直しがあれば最新の法令にも適応することができるでしょう。