割賦販売を行い消費者トラブルになった場合のリスクとは?
割賦販売は便利な仕組みであり、取引に上手く導入することで、消費者および事業者の利便向上に貢献します。
しかし消費者トラブルを生むリスクも秘めています。悪意ある事業者により損害を被る消費者もいるため、割賦販売法により規制がかけられています。
具体的にはどのような点に注意する必要があるのか、この記事で割賦販売法による規制と割賦販売によるリスクについてトラブル事例を挙げて解説していきますので、参考にしてください。
割賦販売法とは
「割賦販売法」とは、割賦販売などの取引を公正にすること、および事業の健全な発展を主目的とした法律です。
「割販法(かっぱんほう)」と呼ばれることもあります。
制定されたのは昭和36年(1961年)で、近年も改正法が施行されています。
基本的に割賦販売に関わる事業者に対し規制を課す内容となっており、購入者等に起こり得る損害の防止やその他必要な措置を講ずること、その上で商品等の流通や役務の提供を円滑にするために求められる規制などが規定されています。
ここでいう事業者は、主にクレジットカード会社などを指しています。
クレジットカード等の信用取引に重要な法律
割賦販売法の具体的な規制対象としては、クレジット契約などが挙げられます。
「クレジット(credit)」は「信用」という意味を持ちます。支払能力があるという購入者の信用を基礎とする契約であるためこのような名称がつけられています。
割賦販売法は、このクレジットカード等を使った信用取引に関わる重要な法律です。
例えばクレジットカードには、商品等を購入するために利用する「ショッピング機能」、そしてクレジットカード会社から借り入れができる「キャッシング機能」の2つの機能が備わっています。
このうちショッピング機能に関しては、2ヶ月を超える分割払いをすることができるのですが、この取引に対しては割賦販売法が適用され、同法による適正な取引が求められます。
キャッシング機能に関しては商品等の購入にはあたらず借り入れにあたります。
そのため割賦販売法の規制は受けず、その代わり貸金業法による規制は受けることになります。
最近の改正でも、事業者に対する行政による監督規定が導入されたり、加盟店の不適正な勧誘があるときは消費者へ与信することを禁止したり、その他社会情勢に合わせた規制が設けられることになりました。
割賦販売(自社割賦)について
そもそも「割賦販売」とは、消費者が商品等の購入を行う際、クレジット会社等を通して分割払いで支払う取引方法のことを指しています。
具体的には、“2ヶ月以上の期間、かつ3回以上に分割して支払うこと”、および“クレジットカードによる販売”を割賦販売といいます。
その他、「ショッピングローン」や「個別信用あっせん契約」なども例として挙げられます。
ショッピングローンは、高額商品を購入するときによく利用される支払方法。個別信用あっせん契約は、信販会社と提携する店舗において、クレジットカードを使わず分割払いに対応する仕組みとして利用されています。例えばスマホやポケットWi-Fiの本体代を支払うとき、月々の通信費に合わせて本体代を分割で支払った経験のある方もいるのではないでしょうか。この支払は、個別信用あっせん契約に基づいて実行されています。
割賦販売の具体的なトラブル事例とは?
クレジット契約を活用した商品の購入等は、契約をした後すぐに購入代金を支払わないで良いため、利便性が高く、消費者金融等を利用するローンより比較的多く利用されています。
しかしこの契約に伴いトラブルが起こることがあります。
店頭販売等で以前の返済が終わらないまま新たな割賦を組ませる
「過去の契約により生じた返済義務がなくならない状態のまま、新たに割賦を組ませる」という事例があります。
割賦販売法では、消費者との前回の契約が未払いであるとき、事業者は新たに割賦販売契約を勧誘するなら、返済計画の再調整などの措置を講じることが求められています。
事業者は自社の利益を最大化することだけを考えていてはいけません。消費者の利益も考慮した取引を行うことが大事なのです。
そのため、支払いを終えていない消費者であることを認識しつつ、断れない雰囲気にして新たな商品を勧めることは避けるべきです。
消費者が「お金が減っているから買えない」「もういらない」と断っているのならなおさらです。
強制することはあまりないと思われますが、断りにくい状態に追い込んで実質強制するようなこともあってはなりません。
割賦販売の契約書に不備があった
クレジット契約は長期にわたると消費者にもリスクがあるため、契約書面の交付が義務付けられています。契約そのものは原則として口頭でも成り立つのですが、クレジット契約など、一部の契約についてはこのように書面の交付が法令で義務とされているケースがあります。
それにもかかわらず、書面が交付されない、必要な事項が記載されていない、といった不備があるまま割賦販売がされてしまうことがあります。
一切の書面が交付されていないといった、違法であることが明らかな事例ばかりではありません。
「書面を交付したものの、それが割賦販売法や特定商取引法の定める法定の書面といえるかどうかが微妙」といった、グレーな事例もあります。
割賦販売の方法で行政から連絡があった
割賦販売に係る業務が適切に行われていない場合、行政が事業者に連絡をすることがあります。
そして、消費者の利益を保護するために必要かつ適当と評価されるときは、改善命令が出されます。
事業者は、行政からの連絡を受けたとき、落ち着いて事実確認を進めましょう。どのような違反行為なのか、その行為が実際にあったのか、調査を行います。
違反行為が確認された場合、早急に対策を検討し、社内で講ずるようにします。
社内だけで適切な対応を取るのが難しい場合、消費者トラブルに強い弁護士に相談して、自社に必要な対応策を一緒に検討してもらいましょう。
割賦販売でトラブルを抱えている方は当事務所にご相談ください
割賦販売を行っているのなら、割賦販売法の内容、その他関連する消費者保護法の規制内容をよくチェックしておく必要があります。
法改正がなされていることもありますので、常に最新の法令に準拠した組織体制を整えておくことも大事です。
適切にルールが周知されていないことにより、意図せず違反行為を犯してしまうこともあります。
どのような規制が適用されるのか、自社において注意すべきことは何か、効率的に法令遵守を徹底するためにも弁護士にご相談ください。