【SNSで拡散】商品の不当なクレームを拡散されたときの対応を解説
インターネット上のサービスは多様化しており、誰もがスマホを持ち歩くようになってからはSNSを利用する方も多くなっています。こうして情報の拡散が早くなり便利になっていますが、間違った情報が拡散されてしまい悩む企業も出てきています。
正当なクレームであればまだしも、不当なクレームをSNSで拡散されることもあり、しかもそれを放っておくと多額の損害を生む可能性もあります。間違った情報・不当なクレームをSNSで発信されたときどう対処すべきでしょうか。当記事で解説します。
SNSでのクレームの種類
言いがかりのようなクレーム、嘘の情報を含むクレームなどがSNSで投稿されることもあります。その背景にはいくつかの理由が考えられ、次のように分類することもできます。
承認欲求を満たすためのクレーム | 過剰な発言を投稿することで注目されたり同調されたりすると、承認欲求が満たされる。 世間の代表になったような錯覚、社会を支配できたような錯覚から優越感を得られ、これに満足するクレーマーもいる。 「誰かの相手にされたい」「認めてもらいたい」などの心理が働くことで不当なクレームをしてしまう。 |
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企業側の対応により悪質化したクレーム | 元は些細なクレームであったものの、企業側の対応をきっかけに激高し、感情的になってしまい、クレームが悪質化するケースもある。 企業側が伝えたい話の中身ではなく、ちょっとした言葉遣いや態度が原因となることも多い。 |
心に問題を抱えた人によるクレーム | 精神的に不安定な人による、異常な怒りを伴うケース。 認知症初期症状の易怒性、非定型うつ病のアンガーアタックなどが原因で感情のコントロールが効かない、暴力的になっている場合もある。 |
ストレス発散のためのクレーム | 社会に対する不満を抱えた人が客という立場を利用して攻撃し、日ごろのストレスを発散しているケース。 「ストレスを解消したい」「自分の方が上だと思われたい」などの心理が働くことが原因のクレーム。 |
このようにクレームにもさまざまなタイプがあり、企業側に責められるべきポイントがなくてもクレームは発生し得るのです。SNS上でも不当なクレームが突然発生する可能性があると認識し、すぐに対応できる体制を整えておきましょう。
不当なクレームが確認できたときの対応
SNSで投稿された内容が虚偽であったとしても、他のユーザーはその情報の真偽がわかりません。そのままの意味で信じてしまってもおかしくはありません。放置していると企業の評価を大きく落としてしまう危険性があることから、何かしらの対応を取る必要があります。
特に一般消費者に商品やサービスを提供している企業は、普段からSNSの状況をチェックしておくことが大事です。
すぐに動き出すことが重要
SNSでの情報拡散はスピードが非常に早いです。真偽不明のまま発信され続け、商品の安全性や品質についての誤認がどんどん広まってしまう危険性があります。
そこで対面でクレームを受ける場合とは違い、SNSでのクレームにはよりスピード感を持って対応していかなくてはなりません。
真偽の確認とリスク評価
スピードが重要だからと、拡散を止めるため「投稿内容を削除してください」といきなりDM(ダイレクトメッセージ)をするのは得策ではありません。初期対応が原因で炎上してしまうこともありますし、まずは拡散されている情報の真偽を確認しましょう。
投稿内容が招くリスクの大きさを評価することも重要です。リスクの大きさによっても取るべき対応は変わってきます。
もし正しくない情報が拡散されているとしても、それが非常に些細なものである場合、これに訴えの提起をするなど「やりすぎだ」と思われる対応を取ってしまうと逆に企業の評価を落とすおそれがあります。
また、承認欲求を満たすため面白ネタとして投稿をしているケースもあります。誤認を生むような投稿には厳正な態度を取る必要がありますが、見る人もネタとして受け取っているものに過剰反応してしまうのも逆効果です。適切なリスク評価をするには、普段からSNSを利用してユーザーと同じ感覚を持つことが重要です。
投稿内容の削除請求
投稿内容が虚偽であったり誇張していたり、不当なクレームであることがわかったときは拡散を防ぐために投稿内容の削除請求も検討します。
ただ、不当なクレームであることが明らかでも、その投稿者に対しては丁寧な対応を心がけましょう。その後の対応(言葉遣いや表現、態度など)が悪いと、元の投稿内容とは別に炎上するおそれがあります。他のユーザーには見えないDMを使うときも、そのメッセージ内容がさらされることは想定しておくべきです。
投稿者自身に削除を要求するほか、SNSの運営に対して削除を求めることも有効です。
正しい情報の発信
誤った情報を削除してもらうと同時に、自社から正しい情報を発信するようにしましょう。自社HPや、自社のSNSアカウントを使って、公式見解を発表するのです。
不当なクレームが投稿されている事実、誤りの内容、クレームの対象になっている商品やサービスについて安心して利用できることの知らせ、などを行います。
弁護士や警察への相談
大事になっているときは弁護士や警察にも相談しましょう。
大きな損害が出てしまっているなら、民事での法的措置として損害賠償請求も検討します。また、とても悪質なケースでは刑事での法的措置として告訴も行います。
例えば、虚偽投稿により業務を妨害されたことを理由に「偽計業務妨害罪」が成立することがありますし、企業の社会的信頼を低下させたことを理由に「信用毀損罪」が成立することもあります。いずれも刑法で3年以下の懲役または50万円以下の罰金という刑罰が定められている罪です。
(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
名誉毀損を理由に損害賠償請求、告訴をすることもできます。名誉毀損罪は、不特定または多数の人が認識する状況下で社会的評価を下げると成立し得る罪であり、SNSでの投稿は名誉毀損罪の要件を満たしやすいです。
そして同罪は投稿内容が真実であっても成立し得るものですので、クレームに真実が含まれていても不当な言いがかりによる悪質な内容であれば同罪の成立を求めて告訴することは可能です。こちらも信用毀損罪や業務妨害罪と同等の刑罰が定められています。
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
SNS対応を想定した体制作りも重要
SNSでのクレーム拡散を一切想定できていないと、初動が遅くなってしまいます。そのため平時から社内で体制を整えておくようにしましょう。そしてSNSを運用するときのルール、誹謗中傷や不当なクレームがあったときの対応マニュアルを策定しておき、従業員による誤った対応が発生しないように備えます。
また、SNSでの拡散にいち早く気付くことも重要ですので、定期的なモニタリングも実施しましょう。