消費者契約法に違反した場合のデメリットとは? 消費者契約法の概要と重要性
事業活動を続けていく中で、事業者相手に取引を行うこともあれば、消費者と取引を行うこともあるでしょう。特に、事業者向けのビジネスではなく、一般消費者に対して商品やサービスを提供する類のビジネスを展開している企業であれば、一般消費者と契約を交わす場面が多くなります。
このとき「消費者契約法」のルールに注意しなければなりません。
この記事で消費者契約法の概要や同法に準拠することの重要性、そして同法に抵触したときに生じるデメリットを解説していきます。
消費者契約法とは?
原則として契約締結に係る当事者間の立場に優劣はなく、取引は対等な立場で行われます。
しかし現実には常に対等な立場で契約を結べるわけではありません。各当事者が持っている情報の量や質、交渉力には大きな差があることもあります。特に商品・サービス等を提供する事業者側と一般消費者とでは、この点につき格差があると言えます。
この格差から生じる不利益を防ぐため、「消費者契約法」という法律が制定されています。
消費者契約法の目的は消費者の保護
契約の当事者間で情報量、知識に大きな格差があると、契約締結後に「そんなはずではなかった」「こんなことになるとは思わなかった」といった不満が生じることも珍しくありません。
消費者側が契約内容を十分に理解していないことからこういったトラブルが起こることもありますし、立場の弱さから不利な契約を結ばざるを得なかったという状況に陥ることもあるでしょう。
契約は当事者の自由にできるという基本的な考えに従えば、「消費者が十分な知識を持つべき」「不利な内容なら契約しなければいい」と考えることもできますが、現実にはなかなかそうもいきません。
そこで消費者を守るため、事業者-消費者間の契約において特別のルールを適用させるために、消費者契約法が機能しています。
簡単に説明すると、消費者を誤認させる勧誘や不当な勧誘があったときに“契約の取消しができる”といったルールが同法には設けられているのです。
同法の規定により取消が可能となる行為例は以下です。
取消しが可能な行為 | 具体例 |
---|---|
不実告知 | 契約にあたっての重要事項につき、事実と異なる説明をした |
過量契約 | 分量や回数等が多過ぎる契約 |
断定的判断の提供 | 不確かな事象であるにもかかわらず、「確実に起こることである」との説明をした |
不利益事実の不告知 | 不利な情報をわざと告げない、あるいは重大な過失に基づいて告げなかった |
不退去 | 契約をしない旨伝えても、営業担当者がいつまでも居座る |
退去妨害 | 販売店等に強引に引き留められた |
その他、必要以上に不安をあおって契約を迫る行為、高齢者等を対象に判断力の低下を不当に利用して契約を迫る行為、デート商法や霊感商法なども消費者契約法で取消しの対象とされている行為です。
消費者契約法自体には罰則がない
消費者契約法には、行政上のペナルティに関する規定や刑事罰規定は置かれていません。
ただし、違反行為があると契約が取り消されたり無効になったりしますので、その結果企業に不利益が生じることはあります。
また、同法違反の事実をメディアで報じられることによる社会的な信用の喪失、関連するその他の法律に抵触することによる罰則の適用などがあり得るため、ペナルティがないからといって軽視してはいけません。
消費者契約法はなぜ企業にとって重要なのか
消費者契約法は、企業活動を行う上でとても重要な法律の1種です。その理由を以下で具体的に示していきます。
コンプライアンス遵守している企業として社会的信用を得られるから
上述の通り、消費者契約法は消費者保護を目的とした法律ですので、同法を遵守する姿勢が消費者に伝われば信頼獲得に繋がります。
そこで消費者に対し自社商品・サービスの提供をするのであれば、社内の営業マン等に対し消費者契約法の内容を周知させる必要があります。
経営者や法務担当者だけが同法の内容を理解していても不十分です。結局は消費者と直接やり取りをする人物の行いにより同法に違反してしまうかどうかが決まってしまいます。
消費者契約法を守ることは企業の利益を守ることにもなるから
企業にとって対外的な信頼は売上にも直結する非常に重要なものであり、これを欠いては安定的に企業活動を続けていくことはできません。
また、顧客との間で「言った」「言わない」の紛争が生じると余計なコストがかかってしまいます。クレーム対応に人員を割かなければなりませんし、結局自社が消費者契約法を違反していたという事実が発覚したときには契約がなかったことになってしまい、営業にかけたコストも意味がなくなってしまいます。
そうすると売上は伸びにくくなりますし、余計なコストが生じることにより利益も下がってしまいます。
よって、自社の利益を守るためにも消費者契約法の遵守は重要と言えます。
消費者契約法に違反するデメリット
消費者契約法に違反することで生じるデメリット、企業が被る具体的なリスクなどを以下に示していきます。
適格消費団体から差止請求を受ける
同法違反から生じる直接のデメリットとしては「差止請求を受ける」ということが挙げられます。
消費者被害を未然に防ぐこと、そして拡大の防止を図るため、「消費者団体訴訟制度」が設けられており、差止請求は同制度に基づいて実施されるものです。
平成19年に創設された制度で、「適格消費者団体」と呼ばれる団体を介して事業者に不当な行為を止めるよう求めるといった内容になっています。
同団体は内閣総理大臣の認定する消費者団体のことであり、消費者に代わって訴訟を提起することも可能とされています。
令和4年2月時点で全国に20ほどの適格消費者団体が存在しています。
差止の対象となるのは不当な勧誘や不当な契約条項を設ける行為、不当な表示などであり、未だその行為が行われていなくても、“行うおそれ”がある段階から消費者は同制度を利用することができます。
景品表示法に違反する可能性がある
消費者契約法に違反すると同時に、行為内容によっては「景品表示法」という法律に抵触するおそれがあります。
そうすると消費者契約法に従い契約の取消し等がなされるほか、景品表示法に規定されているペナルティを受けることになるかもしれません。
景品表示法は「不当な表示や過大な景品類の提供による誘引の防止」を目的とする法律であり、違反の疑いがある場合には消費者庁が調査を行います。
その結果、違反行為が認められるときは消費者庁が「措置命令」をとります。措置命令の内容としては、違反した事実を一般消費者に周知することや、再発防止策の実施を求めることなどが含まれます。
そしてその命令に従わなければ、代表者等が「2年以下の懲役」または「300万円以下の罰金」に処される可能性がありますし、企業に対しても「3億円以下の罰金」が科せられる可能性があります。
さらに、措置命令とは別に「課徴金の納付」が命じられるおそれがあります。
課徴金額は売上額に3%を乗じた額であり、多大な損失を被ることになるかもしれません。
特商法に違反する可能性がある
消費者契約法違反によって、景品表示法以外にも、「特商法(「特定商取引法」とも呼ばれる。)」という法律に違反することがあります。
この法律では、消費者に損失が生じやすい特定の取引形態を対象に、事業者による不公正な行為を規制しています。
そこで契約の取消しやクーリングオフの制度を設け、取引の公正化も狙いとしています。
特商法で規制対象とされている取引形態は以下です。
- 訪問販売
- 電話勧誘販売
- 通信販売
- 特定継続的役務提供
- 連鎖販売取引
- 業務提供誘引販売取引
同法違反により、行政処分として「業務改善指示」「業務停止命令」「業務禁止命令」などを受けるおそれがあります。
また、場合によっては刑事罰を受けるリスクも秘めています。
例えば禁止行為違反により個人が「3年以下の懲役」または「300万円以下の罰金」に処されることがありますし、企業にも「1億円以下の罰金」が科されることがあります。
消費者契約法についてのトラブルは当事務所へご相談ください
消費者との契約を締結するにあたっては、消費者契約法に反した行為をしていないかどうかに留意すること、消費者に十分な情報提供ができているかをよく見直すことが大切です。
違法な状態を避けるためには消費者契約法や関連する法令の知識が備わっていなければなりませんし、契約書の作成方法なども見直しが必要になるかもしれません。
消費者に被害が生じないようにするため、そして自社に損失が生じないようにするためにも当事務所にご相談いただければと思います。