SNSを使って投資(資金調達)を募る前に知っておくべきこと
事業を拡大するには大きな資金が必要となります。消費者向けのサービスや製品を提供している企業ならSNSを使うことで直接顧客にアプローチをかけることも可能ですが、投資の呼びかけには法的な規制が適用されることに注意しなくてはなりません。
どのようなルールがあり、何に注意して取り組むべきか、見ていきましょう。
投資の募集は自由にできない
SNSで投資を呼びかける前に、法律上のルールを知っておかないと、大きな問題を引き起こす危険性があります。基本的な理解があるだけでリスクは回避しやすくなりますので要チェックです。
50人以上で「募集」扱いになる
SNSで投資を募集すると、法律上「募集」として扱われる可能性が高いです。
この「募集」と判定される最大のポイントが「勧誘人数」です。SNSへの投稿は不特定多数に見られるため、限定的な呼びかけのつもりでも50人以上への勧誘と判断されてしまいます。
そして「募集」と判定されると、その後の手続きが大きく変わってきます。
もし1億円以上の募集なら「有価証券届出書」の提出が義務付けられますし、1億円未満でも金額によって別の書類提出の義務が発生します。「少額だから気軽に呼びかけていいだろう」などと安易に考えてはいけません。
複数回に分けて募集する場合でも、一定期間内の累積金額で判定されるため、小口募集を分散させるだけで該当義務がなくなるわけではありません。
金融商品取引業の登録が必要なケースもある
もしファンド形式(投資家から集めた資金を運用して収益を投資家に分配する仕組み)で出資を募るなら、募集行為自体が「金融商品取引業」に該当する可能性が高くなります。
自社の事業だとしても、他者の資金を集めて運用し配当を返すというスキームは、法律上「金融業」とみなされるためです。そして事前の登録なく募集を行うと「無登録営業」として刑事罰を受けるリスクがあることに留意しましょう。
プラットフォーム上のペナルティも要確認
法律以前の問題として、SNS運営会社からアカウント凍結を受ける危険性もあります。プラットフォームの利用ルールについても確認しておくべきです。
X(旧Twitter)やInstagram、FacebookなどのSNSプラットフォームには、それぞれ独自の利用規約を設けています。
「金融商品やサービスの勧誘」を厳しく制限しているプラットフォームだと、たとえ法的な問題がなくても投資を募ることはできません。登録のない業者による投資勧誘を検出する仕組みを設けている可能性もあり、重大な違反として、警告を経ずにアカウント凍結されることもあると認識しておきましょう。
投資詐欺のように見えないように対策
SNSで投資を募ることで、場合によっては「怪しい企業」と負のレッテルを貼られる危険性もあります。
実際、SNS上では投資詐欺も横行しており、警戒しているユーザーもいます。まっとうな事業資金の募集であっても、その表現や勧誘方法次第で「危ない企業がいる」と拡散される可能性があることは認識しておくべきでしょう。
既存顧客が離れたり検索結果に悪評が残ったり、信用毀損につながることのないよう少なくとも以下の情報の提示や表現方法については押さえておかないといけません。
- 元本割れのリスクや市場変動による損失の可能性があること
- リスクについてあえて小さい文字や見にくい表示をしないこと
- 根拠のない優位性の主張をしないこと
- 次のような誇大広告をしないこと
- 「必ず利益が出る」
- 「○%の利回りを保証」
- 「投資元本は確保される」 など
より安全な選択肢を検討
どうしても外部資金が必要なら、法的リスクが低い別の方法も考えてみましょう。
たとえば「少人数との対面での交渉」や「金融機関からの融資」であれば、SNSでの募集とは異なる扱いを受けます。
興味を持った投資家や支援者と個別交渉は、「私募」として扱われやすく、手続きが簡素化される場合が多いです。ピッチイベント(資金調達等を目的に、スタートアップ企業がプレゼンを行うイベント)などの場を活用して、面識のある投資家だけに情報提供する形なら法的リスクも低いです。
また、当然銀行や日本政策金融公庫などからの融資であれば投資ではありませんので、投資に係る法規制について考える必要はありません。
とはいえ、SNSは優れたツールですし、有効活用して資金調達を行うという発想は悪いものではありません。より効率的に規模の大きな資金を集められる可能性も秘めています。弁護士に相談し、適切に投資を募る環境を整えてからであればSNS利用も視野に入れる価値はあるでしょう。
投資の募り方、SNSを使った手法など、心配な点や気になる点がある事業者は当事務所へ一度ご相談いただければと思います。









