カスタマーハラスメント(カスハラ)の対策方法
■カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?
近年、様々な種類のハラスメントが話題となっており、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」も増加してきています。カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先(カスタマー)が優位な立場を利用して、暴言や悪質なクレーム、不当な要求などの著しい迷惑行為をすることをいいます。典型例としては、顧客が店舗の従業員に対して不当に土下座を求めたり、セクハラまがいの言動をとるといったケースです。正当な要求とカスタマーハラスメントの見極めも曖昧であり、それらを見極めて適切に対応することが必要です。
■カスタマーハラスメントへの具体的な対策
カスタマーハラスメントは、従業員や事業にとって大きなストレスとなり、業務に支障をきたす場合もあります。また、カスタマーハラスメントの放置は、企業の安全配慮義務違反にもつながるため、会社には具体的な対策が求められています。
●カスタマーハラスメント対応マニュアルの作成による方針策定
業種ごとにある程度、迷惑行為のパターンは決まっているため、それに対する対応パターンをあらかじめ決めておくことで、迷惑行為、不当要求などのカスタマーハラスメントに上手く対応することができます。
マニュアルに記載すべき事項は、①カスタマーハラスメントの記録方法、②自社における具体的なカスタマーハラスメントの事例、③具体的な事例における望ましい対応例、④具体的な事例における望ましくない対応例、⑤社内における相談先、などです。
実際にあったカスタマーハラスメントの事例を社内で共有する体制を整え、そのうえで、望ましい対応を社内で事前に共有しておくことで、実際に典型的なカスタマーハラスメントの場面に直面した場合に最善の対応をすることができます。また、これらの事項を記載したマニュアルを作成するとともに、マニュアルに沿った対応の研修などをすることで、より効果を上げることができると考えられます。
くわえて、労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めており、使用者(企業)の労働者に対する安全配慮義務を定めています。すなわち、企業には、従業員が心身を害したりすることのないよう、従業員の安全に配慮(注意)することが求められており、この安全配慮義務に違反すると、会社は従業員に対して損害賠償責任を負うこととなります。
具体的には、従業員がカスタマーハラスメントを受けているにもかかわらず企業が何も対応をしなかったときや、事前に全く対応策を準備していなかったときは、その従業員に精神疾患などの被害が発生した場合、安全配慮義務違反として、企業が責任を負う可能性があります。
アルバイトを含めた従業員と会社の間で、安全配慮義務違反を巡るトラブルが起こらないためにも、従業員の相談先を確保し、会社がサポートする体制を整えることは必要です、
●社内での相談体制(弁護士への相談も含む)を作って明確にする
顧客からカスタマーハラスメントを受けた従業員が相談できる体制をあらかじめ作っておき、従業員のサポートをする必要があります。社内のみならず、クレーム対応に詳しい弁護士に直接相談できるようにしておくことも、法的見解を聞いたうえで自信をもって対応することができるため効果的です。
●警察へ通報する
会社側で対応することが困難なほど悪質で執拗な場合には、躊躇なく警察へ通報しましょう。土下座の強要や店舗に居座って怒鳴り続ける等の悪質な行為は、強要罪、器物損壊罪、威力業務妨害罪、暴行罪、脅迫罪などの、刑法上の犯罪に該当する可能性があります。そのような場合には、速やかに警察に通報するべきであるといえます。
いくら努力をしても、悪質なクレームをつけてくるカスタマーは一定数存在します。それをふまえ、顧客であっても無理な要求をすれば断る、という毅然とした態度をとることは、カスタマーハラスメントを減らすにあたって有効となります。そして、カスタマーハラスメントが起こった際には、会社が従業員を守り、安心して働ける環境を作ることが重要です。上記の対策方法を具体例として、悪質なクレーマーから社員を守る手段を整備しておきましょう。
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