「消費者の不当な要求」の線引きは?企業側の対処法についても解説
消費者からのクレームは、サービスに対する正当な要求・苦情であるケースもあれば、いきすぎた不当な行為であるケースもあります。
判断を誤ると、応じるべきでない要求に従ってしまったり、逆に必要な措置を取れず自社の信用を落としてしまったりするリスクが生じるため注意しなくてはなりません。
どのように判断をすればいいのか、企業としてはどう対処すればいいのかを整理しておきましょう。
カスタマーハラスメントの定義と法的な位置づけ
カスハラは「顧客等からのクレーム・言動のうち、要求の内容の妥当性に照らして、要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、労働者の就業環境が害されるもの」と説明されます。
改正労働施策総合推進法が成立したことを受け、カスハラ対策はすべての事業主が向き合うべき問題となりました。
ただし、顧客からのクレームすべてがカスハラに該当するわけではありません。商品の欠陥指摘や接客改善の要望など、消費者の権利の行使として正当なクレームも存在します。
そのため正当なクレームと不当な要求を識別した上で、それぞれを適切に対応することが求められます。
判断の軸となる2つの要素
消費者による要求内容がカスハラかどうか、大きく2つの要素から判断します。
①要求の内容が妥当かどうか
顧客の主張・要求に根拠があるかを、事実関係・因果関係の確認を通じて見極めます。
自社に過失がないにもかかわらず謝罪・補償を求める行為、要求の内容が提供する商品・サービスとまったく関係ない場合(従業員の個人情報・解雇の要求など)には、要求内容の妥当性を欠くと判断できます。
②要求を実現する手段・態様が社会通念上相当かどうか
仮に要求内容に一定の根拠があったとしても、その手段や態様が社会的に許容される範囲を超えていれば、カスハラに該当する可能性があります。
注視すべき行為例を下表にまとめました。
消費者の行動 | 判断 |
|---|---|
商品の欠陥を指摘し、交換・返金を求める | 根拠があれば正当なクレームに該当する |
欠陥のない商品について根拠なく交換を主張したり、繰り返しクレームを入れたりする | 要求内容の妥当性を欠くためカスハラに該当し得る |
謝罪対応中に暴言を吐いたり、怒鳴りつけたりする。土下座を要求する | 手段・態様が社会通念上不相当なためカスハラに該当し得る |
対応済みの事案について、同じ内容のクレームを何度も繰り返す | 継続的・執拗な言動としてカスハラに該当し得る |
従業員の個人的な連絡先や勤務情報を執拗に求める | 業務と無関係な要求のためカスハラに該当し得る |
途中からカスハラに変化するケースにも注意
対応している過程で、正当なクレームからカスハラに転化するケースもあります。
たとえば商品の不具合に対して交換を求めること自体は正当な権利の行使といえますが、その後も同一担当者に何十回も電話をかけ続けたり、「SNSにさらすぞ」と告げたりすれば、その時点の行為からカスハラに転じます。
そのため消費者の行動に対しては、はじめのアクションだけを見て判断するのでは不十分です。
不当要求への対処法
カスハラと判断できる場合は、企業として毅然とした対応が求められます。
自社の過失には誠実に対応する
自社に明らかなミスや説明不足があるなど非があるときは、事実を認め、謝罪と是正措置(返金・交換・再提供など)に取り組むのが基本です。
そのうえで、「どこまでが自社の責任で、どこから先は応じられないのか」という線引きを社内基準に沿って明確にし、妥当な範囲を超える要求については丁寧に断ることが重要です。
正当な苦情への対応と、不当な要求への不応諾を切り分けることで、誠実さを保ちつつ従業員を過度な負担から守りましょう。
やり取りを記録し複数人で対応する
音声記録、応対メモ、メールのやり取りなどを残しておくことは、後の対応判断や法的対応の根拠になりますので大事です。
また、一次対応者が単独で長時間抱え込む状況を作らないことが、従業員を保護する観点からも重要です。社内の者同士でのみ伝わる暗号のようなコミュニケーションを使い、助けを求める仕組みを整備すると良いでしょう。
繰り返される要求には終わりを明示する
対応の見通しを伝えずにいると、顧客は際限なく要求を続けることがあります。
「○月○日までに回答します」「これ以上のご要望にはお応えできません」など、対応の範囲や期限を明確に伝えることが長期化するクレームを防ぐこともありますので、こういった対処法も念頭に置いておくと良いです。
刑事事件に発展しうる行為は通報
カスハラの態様によっては、犯罪に該当することがあります。
従業員に手を出す行為は暴行罪、「火をつけるぞ」などの脅しは脅迫罪、そして「タダにしなければ悪評をSNSに書く」といった形で悪評の拡散をほのめかしながら料金の免除などの金銭を要求する行為は、恐喝罪に該当する可能性があります。
ほかにも、土下座の強要が強要罪に該当したり、いつまでも居座る行為についても不退去罪に該当したりすることがあります。
従業員の身に危険が及ぶ前に、警察への通報も検討してください。









