会社に対する誹謗中傷!投稿者を特定したい場合の手続きとは?
SNSを使えば、誰でも気軽に意見を発信することができます。
その他にも、口コミサイトなど多様なWebサービスが展開されていることで便利な世の中になっている反面、悪評も簡単に広がる世の中になっています。
中には誹謗中傷も含まれ、個人のみならず会社もその被害の対象になっています。今後の事業継続性にも関わる重大な問題ですので、早急に投稿者を特定して対策を講じる必要があるでしょう。当記事でそのための手続き方法などを説明していきます。
誹謗中傷被害への対応
誹謗中傷で起こる被害も多様ですが、その後最終的な対応として考えられるのは「名誉毀損罪などの犯罪にあたるとして刑事罰を求める」、あるいは「発生した損害に応じて賠償金の支払いを求める」の大きく2パターンです。その両方を進めることも可能です。
名誉毀損罪で刑事告訴する
誹謗中傷が常に名誉毀損罪を成立させるとは限りません。行為態様によっては犯罪とまでいえないケースもありますし、別の罪に該当することもあります。
ただ、とても悪質な行為と呼べるときは刑事告訴をして刑事罰を求めるのも1つの手です。
当該人物から繰り返し誹謗中傷を受ける可能性が下げられるかもしれませんし、刑事告訴をしたという事実が他の人物に対する抑止力にもなります。
しかし留意しておきたいのは、有罪が成立して罰金刑等に科されたとしても、その金銭は会社に生じた損害には充てられないということです。
私的な問題については別途次項で説明する民事訴訟を提起するなどして解決を図る必要があります。
民事訴訟で損害賠償請求をする
会社に損害が生じているとき、それがある個人の不法行為により引き起こされたのであれば、損害賠償請求をすることができます。
罪に当たるかどうかの問題同様に、この場合でも誹謗中傷が不法行為と呼べるかどうかの判断が重要になってきます。
個別に事案を評価し、違法性を検討する必要があります。
また、損害賠償請求は必ずしも裁判で行う必要はなく、相手方と直接話し合って請求することも可能です。これは「示談」と呼ばれ、相手方との合意があれば訴訟を提起する手間は省けます。しかし相手方が連絡を無視していたり支払いに応じるつもりがなかったりすると、最終的に民事訴訟に頼ることとなるでしょう。
投稿者の特定が必要
刑事手続きを進めるにも、民事上の解決を図るにも、いずれにしろ当事者である投稿者を特定する必要があります。
どこの誰か分からないまま漠然と支払い請求をすることはできません。
直接店舗で営業妨害をされた場合などであれば手がかりも掴みやすいですが、Web上での出来事となればその相手方がどんな人物なのか見当もつかないですし、世界のどこにいるのかもわかりません。
そのため自力でアカウントを探してアポを取るなどの方法ではなく、プロバイダなどの事業者に投稿者の情報を開示してもらう手続を取った方が効果的です。
誹謗中傷の投稿者を特定する手続き
誹謗中傷などをしている投稿者を特定するときに役立つ仕組みがあります。
法令上認められる「発信者情報開示請求権」に基づき、Web上で投稿を行った人物の情報を第三者であるプロバイダ等に開示してもらうのです。
近年の法改正により特定する手段が1つ増え、少し特定しやすくなっています。
従来からある手続き、改正法の施行により設けられた手続きの2つを簡単に紹介します。
2段階の訴訟手続きで特定する方法
まずは従来から運用されている特定手続きについてです。
この場合、次の2段階の訴訟手続きを経て投稿者情報を掴むことができ、さらに3段階目として損害賠償請求訴訟を提起すれば被害の回復を図れます。
①SNS事業者等からIPアドレス(Web上の住所に当たる情報)等の開示を受けるための訴訟を行う
②通信事業者等から氏名や住所の開示を受けるための訴訟を行う
※SNS事業者等とは、厳密には「コンテンツプロバイダ」のこと。Webサイトの管理者、Webサービスの提供者などであって、投稿が行われる場を提供する事業者。
※通信事業者等とは、厳密には「アクセスプロバイダ」のこと。電話回線、ADSL回線、光ファイバ回線などを通じて、インターネット接続を仲介するサービス業者。
1回の非訟手続きで特定する方法
前項でも説明した従来のやり方だと被害者側の負担が大きいです。投稿者を特定するまでに時間も手間も大きくかかってしまいます。
そこで法改正により、非訟手続として、開示命令・提供命令・消去禁止命令を一体的に行う手続きが設けられました。
※非訟手続とは通常の訴訟手続より簡易な処理を可能とする仕組みのこと。
この仕組みを利用するときは、被害者側が裁判所に投稿者の氏名・住所等の開示を求める1つの申し立てを行うのみです。この申し立てを受けて裁判所がSNS事業者等に情報の開示や消去の禁止を命じます。得られた情報を基に、2段階目として損害賠償請求訴訟を提起すれば被害の回復が図れます。
まずは新設された手続きの利用を検討することになるでしょう。ただしあらゆる事案にこの非訟手続が有効であるとは限りません。
そこで改正後も2つの手段が残されており、簡易な非訟手続での解決が難しい場合には前項で説明した手続きを採用することになるかもしれません。
誹謗中傷への対応のポイント
会社が誹謗中傷の被害を受けたときに備えて、いくつか重要なポイントを紹介していきます。
投稿者情報が残っているうちに早く開示請求を行う
法令上、投稿者を特定する仕組みが作られているとはいえ、開示対象である情報そのものが消去されていてはどうしようもありません。
例えば、投稿者のアクセス情報については一般的に数ヶ月から半年もすれば消えるといわれています。
そのため誹謗中傷が確認されたときは迅速に手続きを進めていくことが大事です。
情報が拡散されないように投稿の削除請求を行う
誹謗中傷への対応が遅れると、投稿者情報が消えてしまうだけでなく、被害が広がるという問題も発生します。
たった1人の投稿でも、ある瞬間をきっかけに爆発的に情報が拡散されるケースも珍しくありません。
そこで投稿がなされたSNSやWebサイト上でDM(ダイレクトメッセージ)などが遅れるときは投稿者に直接削除を要求したり、サービスを運営している事業者に削除依頼を出したりして、早めに投稿を消してもらいましょう。
名誉毀損、侮辱などの被害を示すことができれば、裁判所から削除命令を出してもらうこともできます。
損害と投稿内容の因果関係の証明
損害賠償請求を行うときは、損害が発生していることと、誹謗中傷にあたる投稿内容との因果関係を立証しないといけません。
単に侮辱的な投稿をされただけで、客足が遠のいたなどの問題も起こっていないのであれば、賠償請求を実現するのは難しいでしょう。
また因果関係においては、「その投稿があったから、このような損害が生じた」という関係性を客観的に示す必要があります。
誹謗中傷にお悩みなら当事務所にご相談ください
SNS上で誹謗中傷を受けたとき、「どう対応したらいいのかわからない」と悩むこともあるでしょう。投稿者を特定するのも簡単な作業ではありません。
投稿者が明らかになっても、そこから損害賠償請求に向けた立証や訴訟手続きが必要であり、法律の専門家によるサポートが結果を大きく左右することになるでしょう。
誹謗中傷への対応は早めに進めることが大事ですので、気になる投稿を見つけたときは当事務所にご相談いただければと思います。