消費者問題で行政処分を受けるデメリット|事業への影響や対処法について
一般消費者に対して商品やサービスを提供している企業は、消費者問題に留意する必要があります。
各種法令により一般消費者は保護されており、そのルールを把握した上で企業活動をしていないと消費者保護法違反により行政処分を受けることがあります。
行政処分を受けることで、当該処分による直接的な損失のほか、世間からの信頼を失うなどのデメリットが生じます。
そこで行政処分を受けないようにすること、そして適切な事後対応が取れるよう準備しておくことが大事になります。
本記事でも消費者問題による行政処分を受けることの具体的デメリット、そして行政処分に対する企業の対処についても言及していきますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
消費者問題で発生する主な行政処分
「消費者問題」といっても、その問題の内容は千差万別です。起こした問題の内容や違反内容に応じて行政処分の内容も変わってきます。
そこで以下では、「不当表示や誇大広告」などの景品表示法違反のケースと、「訪問販売や通信販売」などの特商法違反のケースとに大別し、行政処分の内容を解説していきます。
不当表示や誇大広告等の場合
まずは、景品表示法で規制されている「不当表示」や「誇大広告」等をした場合に予定されている行政処分をチェックします。
景品表示法では、自社の提供する商品やサービスに関して、不当に顧客を誘引する表示などをしてはならないと規定しており、表示に関する適正な管理を維持するための体制整備などを求めています。
そして事業者がこの講ずべき措置を取らない場合、内閣総理大臣は、その措置に関して必要な「指導」「助言」ができるとも法定されています。
基本的には、よほど悪質な行為でない限りいきなり刑罰が科されるということはありません。このように、行政から注意や指導を受けることから始まります。
ただ、消費者庁や都道府県が「消費者に生じた誤認の排除、再発の防止」を求める命令は「措置命令」と呼ばれ、この措置命令に応じない場合には刑事罰に処されることがあります。
刑事罰とは懲役刑や罰金刑などのことです。
場合によっては2年の懲役、300万円の罰金を科されることがありますので、違反の指摘を受けた時点でこれに対処することが求められます。
訪問販売、通信販売等の場合
特商法では、次の取引類型に対する規制をかけています。
- 訪問販売
- 通信販売
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引
- 特定継続的役務提供
- 業務提供誘引販売取引
- 訪問購入
そこで、取引に際して氏名等を明示すること、再勧誘をしないこと、不実告知など不当な勧誘行為をしないこと、書面を交付することなど、消費者を守るために様々なルールを設けています。
これらの規制に反した場合、行政処分として「業務改善指示」や「業務停止命令」「業務禁止命令」などを受けることがあります。
改善指示を受けた段階で対処することができればその影響も最小限にとどめることができるでしょう。
しかし業務停止や業務禁止の処分を受けてしまうと、売上などに直接悪影響が及びます。
また、これらの命令にも従わない場合や、悪質な違反行為があったときには刑事罰を科されることもあります。
詐欺罪を犯したとして告訴される可能性もあります。
行政処分を受けた場合、経営への影響は?
上記のような行政処分を受けることで経営にどのような影響が出るのか、この点について次に解説していきます。
企業間取引を打ち切られる可能性がある
行政処分を受けた結果、トラブルの直接の相手方である消費者との関係性が終わるだけでなく、他社との取引が打ち切られることもあります。
消費者問題と直接の関係がない他社であったとしても、打ち切りは起こり得ます。
その取引先としても、消費者問題を起こすような、コンプライアンスが徹底されていない企業と取引を継続することにはリスクがあるからです。
取引を継続するかどうかは相手方企業の自由でもありますし、行政からも違反行為があったとの評価を受けたという事実は、信頼という面において大きなマイナス要因となるでしょう。
他社との業務提携時不利になる可能性がある
他社との業務提携を目指す場面でも、行政処分を受けたという事実が不利に働きます。
業務提携は、経営資源を複数の企業が出し合うことを指します。提携企業がそれぞれに持つ技術やノウハウ、資金を有効活用し、競争力強化を図ります。
上手くかみ合えば大きなシナジー効果が得られる業務提携ですが、リスクも共有することになるため、提携先となる企業に信用がなければなりません。
そこで業務提携前には相手方企業のことを調査します。当然、反対に調査を受ける立場にも立ちます。
そのとき過去に行政処分を受けたという事実が発覚すると、相当に不利になってしまうでしょう。
業務提携をしてくれず、競合他社に取られてしまうかもしれません。
過去の経歴がバレなければ不利にはなりませんが、契約時に「行政処分を受けたことはないか」「消費者トラブルになったことはないか」と問われると嘘をつくわけにもいきません。
そもそも、景品表示法等の消費者保護法に違反すると処分内容等が公表されることもありますので、処分を受けたことを隠し通すことは難しいです。
昨今はコンプラチェックのツールを導入している企業も増えてきていますし、容易に過去の違反内容が調べられるようにもなっています。
「大きなニュースになっていないし黙っておけば問題ないだろう」と安易に考えてはいけません。
行政処分を受けた場合の対処法とは?
できるだけ重いペナルティを課されないためにも、その後の名誉回復を図るためにも、迅速かつ適切な事後対応を取るようにしましょう。
ポイントは次の点です。
- 行政の指示に従うこと
- 弁明により処分を軽減してもらうこと
- 処分内容に不服があるなら異議申し立てを行うこと
行政からの指示に従う
いきなり重たい処分を受けることは通常ありません。
基本的には行政からの指示・注意を受けるところから始まります。
そこで、指示等を受けた時点で素直に応じて改善をするなりして、それ以上事態が悪化しないように努めるべきです。
行政も法令に則って行政処分をするのであり、法令上の要件を満たさなければ行政処分をすることはできません。
そこで要件を満たさないように行動を起こせば行政処分によるリスクは避けられるのです。
管轄庁に弁明等を行い、処分の軽減を図る
措置命令や課徴金納付命令などの行政処分を下す場合、事前に「弁明の機会」が企業に与えられます。
突然これらの命令を受けるのではなく、命令予定を示した上で、その命令前に書面で弁明する猶予が与えられるのです。
特に重たい処分である営業許可の取消しなどの処分を下す場合には、より慎重に判断をするため「聴聞」の機会が与えられます。
聴聞の場合、書面ではなく口頭で弁明をすることができます。
いずれにしろ上手く弁明することで処分を避けられるかもしれませんし、処分自体避けることが難しくても、その内容を軽くしてもらうことができるかもしれません。
どのように弁明をするのが効果的なのか分からない方がほとんどかと思われますので、行政から指示を受けたときや弁明の機会が与えられたときには、消費者問題に強い弁護士に相談するようにしましょう。
処分内容が不満の場合には異議申し立てを行う
行政の判断が常に正しいわけではありません。
そこで処分内容に不満があるときには異議申し立てを行いましょう。ただし、不服の主張方法にもやり方がありますので、闇雲に逆らったところで逆効果です。
行政不服審査法に基づき、適切な時期・方法で不服を申し立てましょう。
なお、処分内容につき争う方法には、①審査請求と②訴訟提起の大きく2パターンがあります。
基本的には①の審査請求から行います。
審査請求は処分を下した行政庁に再考を求める請求です。結局のところ相手方の組織内部で処理されてしまいますが、短期間で問題を解決できることもあります。
これに対して②の訴訟は、裁判官に公正な判断をして貰える手続きですが、問題が長期に及ぶ可能性が十分あり、また手間や費用も増えてしまいます。
行政処分を受けた場合には、当事務所へご相談ください
行政処分を受けてしまったとき、改善措置を取るにしろ弁明・不服申し立てをするにしろ、専門家にフォローを求めることが解決への近道となります。
単純な事案で、改善もすぐにできる場合であれば自社で完結させることもできるでしょう。しかし景品表示法や特商法、その他消費者保護法のすべてに適応するには、消費者問題に強い法律家の存在が欠かせません。弁護士に相談し、どのように対処すべきか、アドバイスを受けることが推奨されます。
弁明をする場合や審査請求、訴訟を提起する場合にはより弁護士の必要性が増します。
すでに行政処分を受けている企業のみならず消費者問題の予防をしたいとお考えの方も、ぜひ当事務所にご相談ください。