請負契約と準委任契約の違い
請負契約は民法632条以下に規定があります。632条は請負契約の定義があり、「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」とされています。
簡単に言うと、自身では対応が難しい仕事を他者にお願いするということです。
準委任契約の理解をする前に委任契約が何かについてを理解する必要があります。
委任契約は643条以下に規定があり、643条には「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」とされています。
そして準委任契約は656条に規定があり、「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。」とされており、この節の規定とは委任契約に関する規定のことを指しています。
委任と準委任の違いは法律行為か否かであるかという点にあります。
次にメインテーマとなっている請負契約と準委任契約の違いへと移ります。両者の違いは主に5つあり、契約の内容、義務・責任、報酬請求時期、成果物、契約解除の可否です。
まず契約そのものの違いについてです。請負契約は仕事の完成を約し、これに対して報酬を支払うことを内容とするものです。他方で準委任契約は、仕事の完成ではなく一定の事務処理行為を行うことを約する契約です。
次に義務・責任についてです。請負契約では仕事の完成をさせることが必須となっているため、完成が義務となっています。また、その仕事の完成について契約不適合責任を負うこととなります。
契約不適合責任とは、完成した仕事に契約の内容と違った点、つまり不適合があった場合に、注文者側から請負人に対して修正や損害賠償を求めることができるというものです。
準委任契約については、そもそも責任は存在しません。
もっとも善管注意義務を負います(民法644条)。善管注意義務とは、職業や専門家としての能力などから一般的に求められる程度の注意を払う義務のことです。
明らかな手抜き箇所などがあった場合には、委託者は受託者に対し賠償を請求することができます。
3つ目に報酬請求の時期です。
請負契約の場合には仕事の完成・納品時点で請求をすることができます。原則としては、仕事の完了や完成品の引き渡しと同時に報酬が支払われるということになり、逆に言えば相手が報酬を支払わない場合には、引き渡しを拒むことができる、同時履行の抗弁権と呼ばれるものが付着しています(民法533条)。
準委任契約は業務処理が遂行された時点で報酬を請求することができます。
報酬は事務処理遂行の対価であるため、完成や成果に対してのものではありません。したがって、定められた仕事が適切に行われていれば報酬を請求できるということになります。
4つ目に成果物についてです。
ここまでのご説明で既にお分かりの方もいらっしゃると思いますが、請負契約には原則として成果物があり、準委任契約には原則として成果物がありません。
最後に契約解除の可否についてです。
請負契約と準委任契約はどちらも契約を解除することができます。
しかしながら、請負契約については一定の制約が設けられています。641条にて「請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。」とされており、「仕事の完成前であること」、「損害の賠償をしなければいけないこと」が求められます。
他方で準委任契約では、656条が準用する651条1項に「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」としており、いつでも契約を解除できます。
もっとも2項本文では例外規定が置かれており、1号「相手方に不利な時期に委任を解除したとき。」、2号「委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)を目的とする委任を解除したとき。」には相手方の損害を賠償しなければなりません。
そしてさらに2項ただし書には例外の例外が規定されており、やむを得ない事由があったときには損害の賠償をする必要がないとされています。
上記のように請負契約と準委任契約では態様が似ているにもかかわらず、大きな違いがたくさん存在するため、契約書に記載された内容が曖昧であった場合にトラブルに発展する可能性があります。
法律事務所桃李は請負契約や準委任契約のトラブルにつき対応をしております。トラブルに巻き込まれた場合はもちろんのこと、契約書の精査についてお困りの方は一度ご相談にお越しください。