社員の個人情報をさらされたときの対処法!カスハラ対策の視点もあわせて解説
接客や窓口対応などを担う社員がネット上にさらされてしまう—こうした行為は、カスタマーハラスメント(カスハラ)の一例として問題視されています。個人情報が公にさらされると当事者には精神的苦痛が生じますし、業務への支障や離職など、会社にとってのリスクにもつながってしまいます。
「さらし」行為の法的な問題
社員の顔・氏名・住所・連絡先などをネット上に無断で公開する行為は、ただの嫌がらせやモラルの問題にとどまらず、違法な行為として法的措置がとれる可能性があります。
たとえば、一定要件を満たしプライバシー権の侵害として不法行為が成立すると、生じた損害に対する賠償責任が発生します。
また、単なるさらし行為にとどまらず誹謗中傷的な内容を含む投稿の場合には、刑法上の名誉毀損罪や侮辱罪が問題になることもあるでしょう。
こうした法的根拠に基づき主張していくことが、社員を守る上で重要になってきます。
社員がさらされたときの初動対応
さらし行為に気づいたら、なるべく早く次の対応を進めます。
証拠を確保する | 投稿のURL、日時、アカウント名、投稿内容(テキストや画像、動画)を記録し、スクリーンショットなどを保存。画像や動画の投稿についてはダウンロードもしておく。証拠は後の削除請求や法的措置の基礎となる。 |
|---|---|
社内への情報共有 | 個人で対応しようとせず、上長や担当部署へ速やかに報告して組織的に対応することが重要。 |
時間が経つほど情報は拡散してしまいますし、発信者の特定に必要なアクセスログが削除されてしまうこともあるため早急に動きましょう。
投稿の削除を求める手段
証拠を確保した後、投稿の削除に向けて動きます。
まず、SNSや掲示板のサイト運営者(プラットフォーム事業者)に対して報告フォーム等から、名誉毀損やプライバシー侵害を理由に削除を申し出る方法が考えられます。
大規模なプラットフォーム事業者には、現在「情報流通プラットフォーム対処法」に基づいて削除申出窓口の整備・公表が義務づけられていますし、申出から原則7日以内に対応結果を通知する体制も求められています。
報告フォームからの申出で削除に応じてもらえないときは、「送信防止措置依頼書」という書式を用いた正式な削除請求を行うことも検討しましょう。報告フォームよりも法的に正式な手続きとして扱われ、削除に応じてもらえる可能性が高まります。
それでも削除に応じてもらえない・緊急性が高いという場面では、裁判所への仮処分申立てにより削除を命じる法的措置を検討しましょう。プライバシー権や人格権の侵害を理由に削除請求が認められる可能性がありますが、対応のハードルが上がるため弁護士に対応をお任せください。
投稿者を特定する手段
匿名での投稿であっても、「発信者情報開示請求」によって投稿者を特定できる可能性があります。
手続きとしては、①SNSなどのプラットフォーム事業者に対して開示を求め、②判明したIPアドレスをもとにインターネット接続事業者(通信会社)に対して発信者情報の開示を求める、という2段階のやり方(いずれも裁判所を介した手続き)がこれまでの主流でした。
しかし現在は、裁判所への「開示命令」申立てという非訟手続(訴訟より簡易な裁判手続)を使って、一段の裁判所手続きで発信者を特定することが可能になっています。
また、審理中にアクセスログが消去されてしまわないよう、開示命令の申立てと併せて「消去禁止命令」を申し立てることもできます。
このような手段を経て投稿者が特定できれば、損害賠償請求や刑事告訴などの対応が可能になります。
当事者の社員へのサポートも重要
さらし行為を受けた社員が精神的なダメージを受け、一人で問題を抱え込まないよう、相談窓口への案内や業務上の配慮を行うことも大切です。
会社には労働契約法に基づく安全配慮義務が課されていますので、その観点からも、社員の心身の健康を守るために必要な措置を講じるべきでしょう。社員が健康を害したにもかかわらず会社が適切に対応しない場合、安全配慮義務違反として会社が損害賠償責任を負うリスクもあるのです。
カスハラ対策も法的義務となる
さらし行為がカスハラと評価されることも考えられます。そしてカスハラに対しては事業主による防止措置が今後法的義務となりますので、適切な体制を整えず放置していると、行政による助言、指導、勧告を受ける可能性があります。さらには、勧告に従わない場合には企業名が公表されることになりますので注意しましょう。
求められる措置としては「カスハラを容認しない方針の明確化と周知」「社内相談窓口の設置」「事件発生時の迅速な対応や再発防止措置」などが挙げられます。
弁護士も活用しながら、法改正後の対応や社内規程の整備を進めていきましょう。










