【クレーム対策】広告を作成するときに気をつけるべき誇大表現とは?
世の中には多種多様なサービス・商品があり、消費者は事業者から提供される情報を頼りに選定しています。消費者間で共有される口コミなども重要な判断材料ですが、広告などから提供される情報は最初に触れるものであって、公式の情報であることからも一定の信頼が置かれています。
しかし事実とのズレがある表示をしてしまった場合、消費者からの信用を失い、クレームを受けることもあるでしょう。
競争に勝つため、できるだけ広告には良い表現を使いたくなるものですが、誇大表現にならないよう注意が必要です。
ここでは、どのような表現・表示が問題になるのか、具体例とともに解説をしていきます。
誇大表現はクレームにつながるリスクが高い
誇大表現が使われて、事実と異なるニュアンスで宣伝がされていると、顧客の誘引には成功するかもしれませんがその後クレームにつながるリスクも高まります。
一時的な売上の向上につながったとしてもクレームが入るような状況だとその後継続的に業績を伸ばすことは困難です。
長く事業を続けるには消費者からの信用を得ることが大事で、その観点から誇大表現は避けるべきといえるでしょう。
景品表示法でも規制されている
誇大表現については景品表示法という法律でも規制されています。仮にクレームを直接受けなかったとしても、同法に違反する行為として行政上の処分を受けたり刑罰を受けたりするおそれがありますのでやはり避けなくてはなりません。
そして、同法では「不当な表示」として誇大表現を含むいくつかの表示を禁止しています。
次項以下で紹介する3つの表示が禁止事項として列挙されていますので、広告等を作成する事業者は注視しておきましょう。
規制表現①優良誤認表示
景品表示法で規制されている表現の1つは「優良誤認表示」です。
これは「商品やサービスの品質、規格等に関する不当表示」のことです。こちらの条文で定められています。
商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
※ 品質 :成分(原材料・純度・添加物など)や属性(性能・効果・鮮度など)のこと。
※ 規格 :公的機関や民間団体で定めた等級、一定要件を満たすことを示す認証など。
※ その他:製造方法、原産地、有効期限、受賞の有無など。
なお、違法に誇大な表現であるかどうか、一律に判断できるケースばかりではありません。「社会一般の認識に照らし合わせて許容される程度を超えるのかどうか」を判断する必要があり、その上で「誤認がなければ、通常誘引されることがない」と認められるとき、法に抵触します。
具体例
いくつか優良誤認表示にあたる例を示します。
- 「〇〇牛」などと明記はしていないが、有名なブランド牛であると勘違いさせるような表現を使っていた。
- 「〇〇100%」などと明記はしていないが、原材料の配合率に誤認を生むような表示をしていた。
- 合理的な根拠を示すことなく、ウイルスが除去できるかのように見せる表示をしていた。
- 合理的な根拠を示すことなく、「食事制限なしで痩せられる」などと表示をしていた。
- 適正な比較をすることなく「〇〇の実績No.1」などと表示していた。
明らかな嘘を記載していなくても、そう誤認させるような表示は禁止されていますので注意しましょう。
規制表現②有利誤認表示
景品表示法で規制されている表現の2つ目は「有利誤認表示」です。
これは「商品やサービスの価格、取引条件等に関する不当表示」のことです。こちらの条文で定められています。
商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
※取引条件:数量や支払い条件、アフターサービス、保証期間など。
本来の価格より著しく安くみせかける表現、他社と比べて取引条件を事実より有利にみせかける表現は、有利誤認表示として規制されています。
具体例
有利誤認表示の代表例は「不当な二重価格表示」です。
二重価格表示とは、販売価格と比較するために他の高い価格を併記して表示することを言います。
「通常価格〇〇円」「セール前価格〇〇円」といった過去の販売価格を表示することで、現在の価格がお得であるように見せるのです。
内容が適切であれば消費者の判断を助ける有益な情報となりますが、過去にそのような実績がなかった場合やごく短期間にしかその価格で販売されていなかったような場合、不当表示に該当します。
他に、次のような表現も有利誤認表示にあたります。
- 実際は他社と大差ない内容量であるにもかかわらず、他社製品より大幅に多い内容量であるかのように表示していた。
- 本来、状況によって変動するものであるにもかかわらず、「毎月○○万円が儲かる」などと固定で利益が得られるかのように表示されていた。
- 維持費・ランニングコストが本来必要であるにもかかわらず、初期費用の一定額だけで足りるかのような表示をしていた。
- 他社については割引サービスを除外して料金を比較し、「自社が最安値」と表示していた。
- 「業界の平均的な価格から値引き」と表示しつつ、実際は平均価格より高い基準額から値引きしていた。
規制表現③指定を受けた特定の表示
景品表示法では、上の優良誤認表示・有利誤認表示のほか、別途指定した表示についても規制する旨規定されています。
前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
誤認を生むおそれがある不当な表示であると内閣総理大臣が指定した場合、当該表示をすると景品表示法違反となります。
6つの表示例
内閣総理大臣の指定を受けた表示は現在6つあります。それぞれ簡単に紹介します。
1 | 有料老人ホーム | 入居後の居室住み替えについての条件が不明瞭な記載や、介護職員等の数が不明瞭な記載がなされた表示など。 |
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2 | おとり広告 | 実際は取引に応じることができない、供給が著しく限られているもののその記載がない表示など。 |
3 | 不動産のおとり広告 | 実在していない不動産や売約済みで取引の対象になり得ない不動産についての表示など。 |
4 | 消費者信用の融資費用 | 実質年率についての明記がなされていない場合の融資費用の額の表示、返済事例による融資費用の表示など。 |
5 | 無果汁の清涼飲料水等 | 無果汁、もしくは果汁や果肉の量が5%未満の清涼飲料水等について、商品名や説明文に果実名を使った表示など。 |
6 | 商品の原産国 | 原産国の判別が困難な場合における、他国の地名や国旗の表示、原産国ではない国の商標や事業者名などの表示など。 |
広告作成で注意すべきこと
広告を作成するとき、商品説明文やパッケージの表現方法を考えるときは、景品表示法の規制に注意しましょう。具体的には次の点を心掛けるべきです。
- 効果・効能について記載するときは裏付けとなる根拠を明示すること
実験や調査を実施してそのような効果が得られることを客観的合理的に説明できる必要がある。主観に基づいて記載することのないように留意する。 - 断定表現や数値の使用には慎重になること
安易に「No.1」「日本一」「必ず」「絶対」などの表現を使うべきではない。根拠が不十分だと誇大表現として違法になってしまうおそれがある。 - 消費者目線に立ってチェックすること
表示内容を確認して、勘違いが生まれるような表現になっていないかどうかをチェックすべき。意図せず誤認させてしまう可能性もあるため要注意
広告作成時のクレーム対策は、当事務所へご相談ください
悪意がなくても、表示内容についてクレームを受けることはあります。
このような事態を避けるためには、景品表示法について深く理解し、一つひとつの表現・表示について評価ができなくてはなりません。
企業の方がこのような対応を取るのは簡単なことではありませんので、効率的に表示についてのクレーム対策を取るのであれば弁護士に相談することを検討しましょう。